九州電力株式会社

永久に消えない電灯を灯すために生まれた森

九州電力株式会社
藤島斉
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今からおよそ100年前、牛などが放牧されるような原野に植樹を始めた人たちがいた。植樹の目的は水力発電を行うための水源涵養林の育成。「河川の水量を確保するためには水源涵養林の存在が不可欠」という考えは、現代でこそ浸透しているが、100年前の日本では〝水を確保するための森〟という概念はまだほとんどなかった時代である。森を育て、表土の流出を防ぎ、河川の水量を確保する。そんな先駆的な試みを経験的に得た知識から始め、カタチとなったのが九州電力が所有するFSC/FM認証林だ。

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原野からスタートした水源涵養の森

大分県を中心に宮崎県と熊本県に点在する九州電力の森。実はこの森の多くは、100年前までは殺伐とした原野だったというから驚く。大正8年、九州電力の前身である九州水力電気では、大分川水系、筑後川水系に隣接する原野を購入すると、その地で植林を始めた。
「もともとは広大な茅場が広がり、野焼きが盛んな地域だったそうです」と、当時の資料を紐解きながら説明してくれたのは、九州電力の森を管理する九州林産株式会社の松尾正信林業部長。水力発電には川の水が不可欠だが、原野では雨が降っても水が一気に流れてしまう。永久に消えない電灯を灯すにはどうしたらいいか。この課題に先人たちは、保水機能を高めて水を確保するための秘策として、人工林作りに取り掛かった。 

水を確保するための森は、同時に電柱材を確保するための森としても利用されていた。いかにも電力会社らしい森の活用方法だが、その後、山の資源が充実してくると、九州配電(九州水力電気から継承した会社)の山林部門を分社化して、九州林産株式会社を設立。以降、九州電力の森は、九州林産が委託管理することとなる。昭和25年頃には製材所も作られ、スギ、ヒノキを利用した柱や板材などの製品を生産。九州電力の社宅用の材を供給するなど、木材事業も本格化していく。

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地球の恵みを利用する企業としての選択

木を植え始めてから間もなく100年。樹齢90年を越える銘木の残る豊かな森に守られた大分川水系、筑後川水系には九州電力の28の水力発電所があり、現在も約170,000世帯相当分の電気を供給している。一方、石炭や石油を燃料とした火力発電所による発電も行う同社では、地球環境の保全や地域環境との共生への取り組みを展開し、環境にやさしい企業グループを目指す。大正の時代から取り組んできた水源涵養のための植樹と育林をより高いレベルですすめていく中、外部審査を受けることによって、水源かん養や土砂の流出防止、野生生物の生息の場、二酸化炭素の吸収など、森林が持つ多様な機能や効果の継続的な維持・向上に繋がり、地域社会との共生に寄与すると考え、2005年3月、電力会社として初となるFSC/FM認証を取得する。「FSCは第三者が審査して認証する国際的な認証制度です。森づくりという水源を守るための取り組みを長年続けていることを外部に発信する上で、FSC認証はとても有効だと思います」と、松尾部長は国際認証であるFSCのメリットを語る。

また、一方でFSCに関しては、木材製品の販売を促進する効果も期待していたという松尾部長。FSC材という付加価値をつけて他の製品と差別化し、少しでも商品価値を高められればと思っていたそうだが、ユーザーのFSCに対する認識がまだまだ差別化されるところまで広まっておらず、当初の思惑との間にはズレがあるという。「世間でのFSCへの認識がなかなか進まないのは残念ですが、自社の努力が足りていないということも認識しています。せっかく認証を取得したのですから、今後はFSCの理念を広めつつ、一般の木材との差別化を図りながら販売していきたいと思っています」と意欲的だ。

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詳細な履歴が可能にする新しい木の選び方

原野での植樹から始まった九州電力の森だが、ゼロからのスタートゆえに、森林簿には森にある木一本一本の生産履歴が明快に書かれているという。いつ植えて、いつ枝打ちをして、いつ間伐をしたという生産履歴はもちろんのこと、例えば同じスギでも、この山のこのスギは○○という品種のスギと分かるように、樹種だけでなく品種まではっきりと生産履歴の控えがあるそうだ。

一般に、市場に出てくる木材に関しては産地と樹種しかわからないが、樹種が同じでも品種によっては芯の赤身が強い木や、成長が早い木、遅い木など特徴が異なる。「たとえば、成長の遅い木の場合、目詰りがして木目がきれいですよとか、強度が高いという説明ができます」と松尾部長。近年、満足度の高い家を建てるために産地である山に足を運ぶエンドユーザーが増えているが、こうした同社の詳細な履歴があれば、樹種だけでなく品種の特徴を知った上で木を選ぶという新しい木の選び方が可能になる。さらにこうしたニーズが増えれば、市場への木材の提供の仕方も変わっていくだろう。品種ごとに香りや苦みを表で表して販売するコーヒー豆のように、自分の趣向に合わせて木材を購入する。そんな時代がそう遠くない将来に来るかもしれない。

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気候の変化で見えてきた未来の森の姿

九州電力の森のなかに「藪くぐり」という大分県の品種のスギがある。かつて、日田地方などを中心に多く植えられ、粘りが強く、製材すると光沢のある芯の赤味が美しいといわれたスギだ。名前の通り、育つときに藪をくぐるように育つくらいよく曲がるそうだが、密に植えて強度間伐をすると良い木に育ち、間伐が遅れると曲がりがそのまま残ってしまうという特徴を持つ。強度に間伐することで木が肥大し、曲がりが取れると昔から言われてきたが、先に行われたFSCの年次審査の際、強度間伐による効果が実際に確認された。製材製品は、赤身の美しい芯の部分が波打つように入っており、美しい自然の模様が確認されたという。また、林業試験場で調べてみたところ、材質としては粘り強く、林齢が60年を越えるあたりから強度が高くなることを確認。マツ材のように、梁などへの利用ができるそうだ。

さて、こうなると次々と強度間伐を行えばいいのにとも思うのだが、ここで九州という土地ならではの問題が浮上してくる。関西以北の日本とは違い、九州エリアでは台風による被害が桁違いに大きい。「山は山全体で風を受けますが、その際、隣り合う木と支えあいながら風の力を分散します。強度の間伐をすると、支えあう隣の木がなくなってしまい、強い風の力を一本だけでは支えきれなくなって折れてしまうのです」と、強度間伐のリスクについて説明する松尾部長。以前は間伐率20%、場合によっては15%くらいにとどめていたそうだ。

ところがここ数年は状況が変わってきたという。「平成10年〜15年くらいまでは台風が大分県をよく通っていましたが、ここ10年くらい台風の通り道が変わってきて、鹿児島県の南を通って四国の方に上がっていくようになりました」。近頃は大きな台風が通らなくなったおかげで間伐率を上げられるようになり、今後は25~30%という間伐率での施業ができるように変わっていくだろうと松尾部長は考えている。大学と連携して行った調査では、台風の通り道によって風害が大きくなる場所と小さくなる場所を山ごとに分類、データベース化も済んでおり、計画的な強度間伐の準備は整った。

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藤島斉

今後は強度間伐を行って下層植生を活発にしていく計画だそうだが、間伐によって木々の根が張れば、土留め、土砂の崩壊防止の効果が上がり、地表流出を止める効果も格段にアップする。かつて、水力発電のための水源を守るために誕生した森は、世紀を変えていっそうその効果に磨きをかけ、それと同時に銘木を蓄積していく。山の中にはまだまだ良い木が残っており、長伐期に向けた取り組みも始めたいという松尾部長。「神社や寺院などの普請に使われるような木を目指して、200年、300年かけて育てていきたいですね。もっとも、もちろん、私たちは誰もその姿を見られませんけどね(笑)」。

九州で見たFSCの森は、〝未来の子どもたちにつなげていきたい〟そんな夢と思いを笑顔で話せる人たちが管理する森だった。


文:藤島斉

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藤島斉

おまけ

胸高直径120cm! 九州電力の森にはこんな銘木も点在します。

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ちなみにこちらの木は2006年に沖縄県石垣島の〝おじい〟の手で琉球地方の伝統的な木 造漁船「サバニ」へと生まれ変わりました。FSCの木材を使って作られたサバニ船は国内初のFSCプロジェクト認証第一号となる製品でした。

基本情報

認証の詳細については名称をクリックいただくとご覧になれます。

【名称】
九州電力株式会社

所在地
(管理会社:九州林産株式会社
〒879-5104 大分県由布市湯布院町中川815−1

主な樹種
スギ、ヒノキ

問い合せ
下記九州林産株式会社にお問い合わせください。

関連CoC認証取得者

【名称】
九州林産株式会社

【取扱製品】
床材、内装材、フローリング、建築用材、丸太、柱材、バイオマス用チップ、製紙用チップ

【問い合せ】

  • 電話番号:0977-84-3161
  • メールアドレス:y_yasunaka@q-rin.co.jp
  • ウェブサイト