FSCトレース

ブロックチェーン技術でサプライチェーンの完全性とトレーサビリティを変革
FSCトレース(旧・FSCブロックチェーン)は、検証された取引・調達データの安全な記録システムで、サプライチェーンの全ての段階において原材料のコンプライアンスを途切れなく検証するよう設計されています。
 

FSC Trace

FSCトレースとは

FSCトレースはFSC認証プロセスを戦略的に強化するシステムで、森林から始まって陳列棚に並ぶまでの過程で、すべての製品が持続可能であること、法令に準拠していること、効率的に管理されていることを保証します。このプラットフォームはブロックチェーン技術を土台とし、参加者は、秘密を保持しつつ柔軟かつ効率的に関連データにアクセスし、データを交換することができ、情報の検証やデューデリジェンス、そして変遷する規制への適合をお手伝いします。
FSCトレースへの参加は任意で、FSC認証取得者またはFSCプロモーションライセンス取得者が参加できます。
 

FSCトレースにアクセスするには

現在FSCトレースはベータ版で、限定されたサプライチェーンで厳格な試験を実施中です。
2025年初めから積極的に企業へ登録をご案内する予定で、まずは優先アクセス登録した企業から開始します。まだ未登録の企業は、こちらでご登録いただけます。最初のリリースでは、ユーザーのプラットフォームアクセス、取引相手との接続、製品の設定といった中核的な機能を優先します。
スピーディなリリースサイクルで、新機能が使用可能になるに従い順次追加していきますが、特にFSC EUDR対応報告機能を優先します。

 

FSCトレースでサプライチェーンのパフォーマンスアップ

データフロー
サプライチェーン全体がプラットフォームに参加し、ユーザーがデータ共有を許可した場合、サプライチェーン全体を通した途切れのないデータフローにより、検証とトレーサビリティの両方を実現します。樹種、地理的位置情報、伐採時期などの検証可能な情報がこれに含まれます。

EU規制への適合性
EU地域の現行規制や今後導入される規制に完全対応しており、変遷する基準に確実に適合するようになっています。

管理の負担を軽減
認証プロセスの様々な要素を自動化することで、管理上の負担軽減が可能になります。これには、数量集計や製品グループリスト、樹種リストの生成や、サプライヤーの認証の検証が含まれます。

FSCライセンス取得者の規制準拠やEUDR対応を支援
FSCトレースのプラットフォームは、FSC認証取得者の欧州連合森林破壊防止規則(EUDR)などの法令への準拠を支援するよう設計されています。FSCトレースをFSC EUDR対応モジュールなどのツールと併用すれば、検証プロセスを向上し、データを充実させ、サプライチェーン全体でFSC表示を繋ぐことができます。これにより、規制への準拠に役立つだけでなく、持続可能で責任ある企業行動もサポートします。

供給者の検証
FSCトレースでは取引中に供給者の認証状況を瞬時で検証することができるため、原材料を確実に認証済みEUDR準拠供給源から調達できます。

包括的なデータ収集
FSCトレースは、FSC認証製品で使われている原材料について、原産地の地理的情報、伐採時期、樹種、製品グループなど、重要な詳細情報を記録します。

合法性文書の伝達
FSCトレースでは、コンセッション(伐採権所有地)契約書、伐採許可、輸出許可書など、製品が合法的に調達されたことを証明するために必要な書類を添付できるようになっています。書類は関連製品に直接紐付けられるため、ユーザー自身やサプライチェーン川下の取引相手が必要に応じて確認することができます。

トレーサビリティの検証
ブロックチェーンは、取引製品に関して検証可能な情報を提供し、EUDRが規定する通り、製品を供給源の森林*や伐採地点まで遡って追跡します。

使いやすさ向上のため継続的に開発
FSCでは、ベータ段階にとどまらず真摯にイノベーションに取り組んでいます。FSCトレースは、2025年を通して定期的に更新リリースを行い、ユーザーインターフェイスの改善や新機能の導入を進めます。追加機能は体系的に組み込まれ、FSCライセンス取得者にさらなる付加価値を提供するとともに、新しい規制要求事項との緊密な整合性を徹底します。

こうした継続的な取り組みにより、認証や規制遵守に伴う管理上の負担は大幅に軽減され、FSCトレースは、合理的かつ効率的にサプライチェーンを管理するための貴重なツールとなります。
 

よくある質問

FSCトレースの使用について

  1. FSCトレースではどのようにデータを検証しますか?

    取引をブロックチェーンに記録するには、取引当事者同士で以下の情報について合意がとれなければなりません。

    • 取引相手は誰か(FSCライセンスコードまで含めて入力)
    • 請求日
    • 製品カテゴリー
    • 樹種構成
    • 量(材積または重量)

    取引当事者の一方がFSCトレースに取引の詳細情報をアップロードしたら、量を除くそのすべての情報の内容が取引相手にも、FSCトレースアプリ上で見えるようになります。取引を検証し、ブロックチェーンに記録するためには、取引相手も量を入力しなければなりません。この2つの数字は、誤差±2%の範囲内で一致しなければなりません。

    なお、FSCトレースのユーザーインターフェイスを使用して個別取引のマッチングを行う必要はありません。一括アップロードやAPIチャンネルを使って取引データをアップロードすることもでき、取引相手がすでに提供しているデータと整合する場合は自動的にマッチングが行われ、取引がFSCトレースに記録されます。

  2. FSCトレースは、データ入力エラーをどのように扱いますか?

    ブロックチェーン上にあるデータは変更不可能であるため、一旦提出された記録データは削除できません。しかし、もちろんデータ入力中に間違いが起きることもありますので、その場合はFSCトレースに入力済みのデータに対する訂正を記録することができます。

    会計システムでの編集記録と同様に、FSCトレースでは更新情報が新しい入力情報として記録され、当初の入力に対する訂正としてマークされます。検証済みの取引に対して編集を行う場合、変更内容について取引相手と合意する必要があり、サプライチェーンステータスは「検証済み」から「未検証」に変わります。これは川下のすべての取引当事者にも見えます。

  3. どのようにFSCトレースにデータをアップロードするのですか?

    以下の方法によりデータをアップロードいただけます。 

    • 直接入力:個別の取引をアプリのウェブサイトで直接記録することができます。あまり頻繁に取引しない小規模企業や、初めてFSCトレースの使い方を学ぶ際には、この方法が最適です。
    • 一括アップロード:特定期間中の複数の取引を含むスプレッドシートをまとめてアップロード方法です。大量のデータを管理するには、この方法が効率的です。
    • API統合:認証取得者には、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)を使って社内のシステムをFSCトレースと統合するという選択肢もあります。
  4. FSCトレースはどのようにCoC認証をサポートしてくれるのですか?

    FSCトレースの大きな特徴は、FSC認証プロセスのさまざまな要素を自動的に取り扱えることです。具体的には、原材料収支記録や数量集計などの自動生成が可能です。

    また、取引相手リストを維持し、認証状況を定期的に検証します。こうした作業の自動化により、FSCトレースは認証取得者がリストを外部で管理する必要をなくし、管理上の負担を大幅に軽減します。

  5. FSCトレースを使って全製品ではなく一部の製品だけを管理することはできますか?

    製品の管理にFSCトレースを使用する範囲は、柔軟にお決めいただけます。

    特定の製品だけに限定してブロックチェーンを使用することは可能です。特定の製品シリーズや市場、法令順守の必要性などに限定して選択的に使用することで、独自のニーズに合わせてブロックチェーンの利点を生かすことができます。

    ただし、FSCトレースをすべての製品に使用しない場合、生成された数量集計は事業全体をカバーしない可能性があるため、FSC監査に利用できるデータの包括性に影響する懸念がある点に注意が必要ですどのように使うか決めるのはユーザーであり、FSCトレースは各社独自の事業のニーズや戦略的目標に合わせてデザインできる拡張可能な解決ツールを提供します。

  6. FSC管理木材を含む取引は、FSCトレースでどのように扱われますか?

    FSC管理木材は、低リスクであることが検証され限定された量でFSCシステム内で使用が許可される森林由来製品を指し、FSCトレースでも全面的にサポートしています。

    FSC管理木材を導入する最も簡単な方法は、FSC管理木材規格に基づいて直接認証されている森林から調達することです。これらの森林は、認証プロセスの一環として必要情報のすべてを提供することができ、認証機関の検証により低リスクと確認されています。

    しかしFSCシステムでは、非認証の低リスク森林に由来するFSC管理木材を導入することも可能です。この場合、企業はすでにデューデリジェンスシステムを実施している必要があり、このようなインプットに対する適切な管理の適用を徹底しなければなりません。この条件を満たしている企業は、FSC管理木材の供給源に関する関連データを直接FSCトレースに入力することができます。

  7. 誰が地理的位置情報や伐採時期データをアップロードすることができますか?

    地理的位置情報の収集は、森林管理者の責任です。この作業に役立つさまざまな技術やツールが市販されており、活用することができます。 

    FSCトレースには、森林管理者がこのデータ、特に(EUDRの要求事項である)伐採区画データをアップロードすることができる専用データ欄があり、任意で使用できます。

    FSCトレースにアップロードされた他のデータと同じく、地理的位置情報も川下の参加者と共有することができますが、それができるかどうかは、常にデータ保有者(この場合は森林管理者)の選択に任されます。

  8. 記録された伐採地が正しいかどうかを確認する仕組みはありますか?

    FSCトレース導入の初期段階では、記録された伐採地の正確さに関する自動検証機能はありません。しかし、アップロードされたGeoJsonファイルを認証済み森林管理地域に照合して検証する機能は2025年に導入される予定となっています。このステップにより、提供されたデータが必ず認証範囲に正確に対応することが確実となり、FSCトレース上の情報の信頼性を向上させます。

  9. FSCトレースはどのようにクレジットシステムに対応しますか?

    FSCトレースには、FSCクレジットシステムも組み込まれており、林産物取引の詳細な内容の追跡・管理をお手伝いします。 

    ユーザーは、入荷数量、生産工程、販売という3つの段階を通して各製品を管理することができます。認証取得者はこのシステムを使って、生産に投入する数量を正確に集計し、原材料使用量の詳細な記録(地理的位置情報や伐採時期情報がある場合はこれ含む)を作成することができます。 

    FSCクレジットシステムでは、認証取得者は先入れ先出し方式などの在庫使用ルールを規定することができ、生産工程がバッチ管理されていない場合でも、効果的に生産バッチを管理することができます。こうした柔軟性により、このブロックチェーンシステムはFSCシステムの中で多様な運用モデルを確実にサポートすることができます。(なお、ルールに基づく在庫配分は、FSCトレースベータ版試用の最初の数ヶ月間は利用できません。)

  10. 生産がバッチ単位で行われていない場合、ブロックチェーンはどのように機能するのですか?

    FCトレースは柔軟性を考慮して設計されており、バッチ管理をしていない場合も含め、さまざまな生産工程に対応しています。 

    バッチ管理していないケースでは、ユーザーは異なる基準(特定の期間や先入れ先出しルールなど)を使って、特定アウトプットで使われた可能性のあるインプットを選択することができます。EUDRなどの規制の規定では、特定の製品に関して実際の供給源が分からない場合、その供給源を含む既知の供給源の上位集合を特定し、製品がその上位集合以外の供給源から調達された林産物を含んでいないことを示せば良いとしているため、このアプローチによりこうした規定に対応できます。  

    なお、ルールに基づく在庫配分機能は、FSCトレースベータ版の試用の最初の数ヶ月間はご利用いただけませんのでご注意ください。

  11. FSCトレースでは、FSC回収原材料はどのように扱われますか?

    回収原材料とは、使用済み資源を異なる用途に使用またはリサイクルした資源のことで、そのデータは、回収原材料がサプライチェーン上で新製品に再使用された時点でFSCトレースに入力されます。この機能は回収原材料を扱う権限を有する認証取得者だけが使用することができるため、回収原材料の導入とその後の追跡は必ず、必要な資格と監督権限を持つ認証取得者によって行われます。

    FSCトレース内で回収原材料の透明性と信頼性を高めるため、認証取得者は、リサイクルされた原材料であることを証明する検証可能な書類をアップロードすることができます

  12. FSCトレースは、複数の種を含む製品を扱うことができますか?

    林産物産業では製品が複数の樹種で構成されているケースが多く、FSCトレースはそうした製品の複雑性への対応に優れています。FSCトレース内で製品を設定する際、認証取得者には、製品に複数の樹種が含まれているかどうかを指定する選択肢があります。

  13. 森林管理者が伐採地点の地理的位置情報をアップロードする際、複数の場所をグループ化することはできますか?

    現在のFSCトレースベータ版では、森林管理者はGeoJSONファイルを使って伐採地点の地理的位置情報データを個別にアップロードしなければなりません。このフォーマットの使用により、正確で標準化された地理的データを確実に捉えることができますが、現在は1回の入力で複数の位置情報をグループ化する機能はサポートされていません。そのため、各伐採地点を個別に入力する必要がありますが、それにより、森林由来製品に関して明確で個別具体的なトレーサビリティを確保することができます。

    しかし、FSCトレースチームでは地理的位置情報データ管理の柔軟性と効率を高める必要を認識し、プラットフォームの機能を拡張して、地理的位置情報データを保存し複数の伐採地点をグループ化する機能を追加する計画です。将来この機能が実装されれば、森林管理者は、特に複数の近接した地域にまたがる施業を行う場合、伐採地点の地理的位置情報をもっと簡単に管理・報告できるようになります。

    FSCトレースに関する最新情報や新機能については、現在準備中のFSCトレースの製品ページで製品ロードマップの詳細を示しますので、こちらをフォローすれば簡単に情報を得られます。

  14. 生産の過程において、地理的位置情報はどのように特定の製品に添付されるのですか?

    FSCトレース内では、製品は入荷数量、生産工程、販売という3つの段階を通って流れていきます。

    生産工程を記録する際、特定のアウトプットバッチに使われるインプット製品が記録されます。このインプットに添付されるデータには、原産地の地理的位置情報や伐採時期などが含まれており、このデータをアウトプット製品に添付することができるので、原産地まで遡るトレーサビリティが維持されます。

    FSCクレジットシステムについては、ルールに基づいてこの組み合わせが行われます。(詳しくは「FSCトレースはどのようにクレジットシステムと対応しますか?」の項目をご覧ください。)

  15. 複数の製品を含む請求書は、FSCトレースでどのように扱われますか?

    FSCトレースは現実の取引の複雑性に対応できるよう設計されており、複数製品を含む請求書にも対応しています。1回の取引で多様な製品を含む場合があることを認識し、システムでは請求書の各行を個別の取引項目として扱います。これにより、製品が会計書類上でどのようにグループ化されているかにかかわらず、各製品について詳細なトレーサビリティを確保し、検証を徹底します。 

    具体的な機能は以下の通りです。 

    • 個別行の入力:請求書の各行が、個別の項目としてFSCトレースに入力されます。各行が異なる製品を表すExcelファイルを一括アップロードすることも、またウェブアプリ上で個別に入力することもできます。 
    • 製品管理の柔軟性:各製品の行を個別の表示として扱うことにより、FSCトレースではより柔軟に製品を管理・追跡できます。その後の生産・販売の段階では、異なる請求書に含まれる製品や異なるサプライヤーの製品をまとめて扱うことも、個別に追跡することもできます。 
    • トレーサビリティの向上:この方法は、製品データが単一の区別不可能なバッチにまとめられてしまうのを防ぎます。代わりに、各製品を個別に認識する状態を維持するので、社内全体を通して、また顧客に至るまで、精度の高いトレーサビリティを実現します。

ブロックチェーンに関する一般的な質問

  1. ブロックチェーンの基本:ブロックチェーンとは何ですか?どのように機能するのですか?

    簡単に言うと、ブロックチェーンとは、アクセス権限のあるネットワーク内でつながった複数のコンピューターにわたって取引を記録する、安全性の高いデジタル台帳です。FSCでは、この技術を活用して国際森林認証プロセスの信頼性と透明性を高めます。

    ブロックチェーンは、FSCが国際森林認証プロセスの信頼性を確保するために使う、編集不可能なデジタル日誌のようなものと考えると良いでしょう。このデジタル日誌の中で「ブロック」の鎖を作っていきます。各ブロックには、森林認証や森林に由来する製品に関する重要情報が収納されています。

    さて、相互に取引している企業同士で、この日誌をシェアすると想像してみてください。各企業はそれぞれ日誌を持っています。新しい森林由来製品を追加したい場合や、既存の情報を更新したい場合は、取引相手同士で、情報が正確であると合意しなければなりません。

    当事者双方の合意が取れたら、新しい情報がそれぞれの日誌に書き込まれ、この情報は前の情報とリンクされて、チェーンが作られます。ここで特徴的なのは、この日誌にいったん書き込まれた情報は消せないという点です。鉛筆ではなくペンを使って記載するようなものです。そのため、誰かがこの情報を書き換えようとすると、チェーンの中にいる誰もが気づきます。これにより、FSC認証プロセスのセキュリティが高まるだけでなく、一度ブロックチェーン上に記録されたデータは、非常に改ざんが難しくなるのです。

  2. ブロックチェーンはFSCサプライチェーンの完全性をどのようにサポートしますか?

    FSCトレースは、ユーザーが管理するプライベートなデジタル台帳であり、FSCサプライチェーン全体における原材料取引のコンプライアンスを検証できるよう設計されています。プライベートコンソーシアムブロックチェーンを使用しているため、仮想通貨で使われているパブリックブロックチェーンと異なりアクセス制限を設けることができ、参加者はどのデータを誰と共有するか管理できます。従来の森林サプライチェーンでは、紙の書類を検証・監査することが難しいため、不正が行われる可能性がありました。ブロックチェーンは、紙面上の表示の代わりに、変更を行うと必ずデジタル証跡として残るセキュリティの高い技術を使うことで、厳密な監査をより簡単に実施しやすくなり、コンプライアンスとトレーサビリティを強化します。

    また、FSCトレースプラットフォームでは、取引当事者同士が互いを知っているかどうかに関わらず原材料を原産地まで遡って追跡できるため、実務的な問題の解決に役立ちます。当事者が全員ブロックチェーンを使用し、同意している場合、サプライチェーン全体で情報が流れるようにできる一方で、同時に、他の詳細情報やサプライチェーンの取引当事者全員を特定する情報をプライベート扱いすることも可能です。

    FSCでは、ブロックチェーン技術は認証取得者が欧州連合森林破壊防止規則(EUDR)などの新規制の要求事項を満たすのをサポートする上で欠かせないツールになると考えています。それは、認証取得者がサプライチェーン全体を通して原材料のコンプライアンスを安全に追跡・検証でき、また伐採時期や地理的位置情報など規制が要求するデータを、サプライチェーン全体で共有できるからです。

  3. ブロックチェーンはエネルギー消費が大きく環境に悪いのではないでしょうか?

    ブロックチェーン、特にビットコインのようなパブリックブロックチェーンは、複雑なコンセンサスメカニズムに依存するためエネルギー消費量が大きくなる可能性があります。動作に大量のエネルギーが必要なのは、このコンセンサスメカニズムと、このシステムをサポートする参加者に提供されるインセンティブ(新しいビットコインのマイニング)です。

    しかし、FSCで使っているようなプライベートコンソーシアムブロックチェーンでは、このような必要がないため、エネルギー消費は通常のデータベースよりやや多い程度です。FSCでは真摯にサステナビリティに取り組んでおり、事業が環境や社会に与える影響を考慮して、常に責任ある技術の選択を行います。

FSCトレースの背景

  1. 1. FSCトレースはどのような問題を解決するために設計されているのですか?

    FSCトレースは、FSCが認証プロセスの完全性を確保するために使用している既存のシステムが進化したものです。現在、潜在的な体系的不正を検知するには、取引情報の照合とそれに続く調査に頼るしかありません。この方法は、効果的ではあるものの、問題が発生してから遡及的に行われることが多いのが現状で、その間に問題のある商品が消費者に到達してしまう可能性もあります。また、この調査には、取引関係における秘密を保護するため、複数の当事者が関わる複雑なプロセスを伴います。

    これと対照的に、FSCトレースはプロセスの効率を高め、取引におけるプライバシーを保護しながら、検証済みの情報をタイムリーに提供します。このアプローチにより、素早い事前対応が可能になり、問題が悪化する前に検知・解決する能力が向上するため、FSCの、そしてFSC認証取得組織の信頼性を守ることができます。

  2. FSCトレースは、木材や紙の原材料だけに対応しているのですか?

    いいえ、FSCトレースは木材、紙の他に、ゴム、竹、蜂蜜などの非木材林産物(NTFP)も含め、FSCが認証するすべての森林由来製品についてトレーサビリティを提供します。

  3. 誰がFSCトレースに参加できますか?

    FSCトレースの公開後は、FSC認証またはプロモーションライセンスを保有するFSC認証取得者なら誰でも参加できます。

  4. 非認証製品にもFSCトレースを使うことはできますか?

    FSCトレースは、FSC表示製品の取引に限定して設計されています。現時点では、非認証製品に使用することはできません。(ただし、FSC管理木材には使用することができます。詳しくは以下を参照してください。)

  5. FSCトレースは、他のシステムとも相互運用性がありますか?

    FSCは、後日公開されるFSCツール(デューデリジェンス報告システムなど)と完全に統合されます。現在FSCでは、ユーザーがそれぞれのニーズに最も合ったツールと統合できるよう完全な柔軟性を実現するため、APIの使用なども含め、FSCトレースと他のシステムの相互運用性を確保する方法を検討中です。  

    FSCの目標は、認証・ライセンス取得者それぞれの企業の仕組みに最も適したデジタルツールを選ぶことができるよう、柔軟性を確保することです。FSCトレースは相互運用性を確保できるよう設計されているため、ライセンス取得者は組織内および異なる組織間でデータや情報を交換することができます。

    相互運用性をサポートする主要メカニズムはアプリケーションプログラミングインタフェース(API)で、またカスタム入力欄を追加して製品や取引に外部固有識別子を付与することができるので、他に使用するITシステム上の特定の記録を参照することができるようになっています。 

    今後FSCで統合システムの構築が進んだら、このページを更新して具体的な情報を追加します。

  6. FSCでは、既存のデータの枠組みや構造との互換性をどのように確保するのですか?

    FSCでは、可能な限り業界標準のデータの枠組みを使うことにしています。ブロックチェーンデータフォーマットおよびAPIは、 国際社会環境認定表示連合(ISEAL)と共同開発したISEALコアメタデータ規格に定める規格に準拠しています。

  7. FSCトレースは従来の書類記録に置き換わるのですか?

    FSCトレースの使用により、認証取得者と監査人の両方にとってCoC監査を容易にすることを目指しています。現在は監査プロセスにおいて認証機関が紙の書類に基づく証拠を確認していますが、今後は紙の記録の代わりにFSCトレースに保管された記録を使用することが可能になります。伐採許可証等、サプライチェーン上のどこでも有用な書類も、FSCトレースに記録された取引にデジタル文書として添付することができます。認証取得者は、監査の際に必要となるすべての関連データを提供できる、専用の報告機能にアクセスすることができます。

  8. FSCトレースは、FSC表示の請求書を検証してくれますか?

    FSCトレース自体が、請求書を直接検証したり、請求書のコピーを求めることはありません。代わりに、コンセンサスメカニズムで運用されており、表示が検証される前に、取引当事者の両方が入力する、製品タイプ、数量、樹種、請求書番号などの各取引の内容が一致しなければなりません。この突合プロセスが請求書の内容を間接的に検証することとなり、ブロックチェーン上に記録されたデータの一貫性と正確性を確保します。

  9. FSCトレースの使用は必須ですか?

    プラットフォームへの参加は完全に任意なので、認証取得者はFSCトレースをそれぞれの事業運営に柔軟に組み込むことができます。

  10. FSCトレースの使用が任意なら、バリューチェーン全体が参加しない場合にFSCトレースに参加する価値はあるのでしょうか?

    もちろんあります。FSCトレースは、単独で参加する場合でも大きな価値を提供します。例えば、サプライヤーの認証状況の検証が容易になり、FSCのデータベースsearch.fsc.orgで手作業で確認する必要がなくなります。さらに、取引データをすべてブロックチェーンに入力すれば、樹種リスト、製品グループリスト、数量集計が自動生成されます。しかし、FSCトレースの潜在的能力は、特に欧州連合森林破壊防止規則(EUDR)などの規制遵守に関しては、サプライチェーン全体が参加することで最大限に発揮されます。これにより、地理的位置情報や伐採時期などの重要データを、サプライチェーン全体にわたって途切れなく伝達することが可能になります。

  11. FSCプロモーションライセンス取得者もFSCトレースを使うことができますか?

     FSC認証ラベル付きの最終製品に手を加えずに取引するFSCプロモーションライセンス取得者(PLH)は、FSCトレースがすべてのユーザーグループに公開された後で、FSCトレースを使用できるようになります。

  12. FSCトレースへの参加にはどのような費用がかかりますか?

    FSC認証取得者はプラットフォームに無料で参加できます。基本機能へのアクセスは、FSC認証取得者にすでにお支払いいただいている既存の料金に含まれています。ただし、将来有料のプレミアム機能を追加する可能性があります。また、他のプラットフォームとの相互運用性についても検討中ですが、この技術の提供にかかる費用を賄うために、追加料金を設ける可能性があります。

  13. いつFSCトレースに参加することができますか?

    2025年初めから希望企業に試験運用版への優先登録をご案内しています。まずは優先アクセス登録した企業から開始します。

    まだ未登録の企業は、こちらで登録できます。最初のリリースでは、ユーザーのプラットフォームアクセス、取引相手とのリンク、製品の設定といった中核的な機能を優先します。

    迅速なリリースサイクルで、新機能が使用可能になるに従い順次追加していきます。次回のリリースでは、取引情報を突合し、サプライチェーンとリンクする機能が追加されます。また、EUDR対応FSCアラインド報告機能も優先項目です。

    開発の進捗状況や公開計画の最新情報の確認には、ウェビナーを頻繁に開催していますのでご参加ください。こちらで参加登録が可能です。

  14. FSCトレースのユーザーは、森林から最終販売業者まで、CoC全体を見ることができますか?

    現行のFSCシステムと同様、FSCトレースのユーザーは、直接取引する相手(顧客およびサプライヤー)を見ることができます。しかし、直接見える範囲は限られていても、ブロックチェーンにより、データ保有者の制限次第でさらに下流の取引当事者間のデータのやり取りが容易になり、情報の秘匿性を損なうことなくトレーサビリティと完全性を向上することができます。

  15. 当社は認証取得企業ですが、非認証の顧客に製品を販売する場合に、顧客はFSCトレースを使って製品の表示やデータを受け取ることができますか?

    FSCトレースは、認証済みサプライチェーンにおいてFSC認証製品の透明性と一貫性を向上させ、支援するために設計されています。現在FSCトレースを利用できるのは、FSCライセンス取得者に限定されています。FSCライセンス取得者ではない企業は、ブロックチェーンを使って表示やデータを受け取ることはできないため、認証済みのサプライヤーに、製品に関する特定データをケースバイケースでダウンロード・共有してもらう必要があります。

FSCトレースとEUDR等の規制への準拠

  1. FSCトレースは、EUDRなどの規制への準拠にどのように役立つのですか?

    FSCトレースは、FSCライセンス取得者が欧州連合森林破壊防止規則(EUDR)などの規制への準拠を、以下のようにサポートできるように設計されています。 

    1. サプライヤーの検証:取引中にサプライヤーの認証状況を瞬時で検証することができるため、確実にEUDRに準拠した認証済み供給源から調達できます。
    2. 検証されたトレーサビリティ:サプライチェーン全体がFSCトレースに参加している場合、ブロックチェーンは取引製品に関して検証可能な情報を提供します。この場合、EUDRの要求通り、製品を原産地の森林*や伐採地点まで遡ることができます。ただし、サプライチェーンの一部が欠けている場合、これらの情報を入手することはできません。
    3. 包括的なデータ収集:FSC認証製品の原材料について、原産地の地理的情報、伐採時期、樹種、製品グループなど、重要な詳細情報を記録します。
    4. 合法性文書の伝達:FSCトレースは、コンセッション契約書、伐採ライセンス、輸出許可証など、製品が合法的に調達されたことを証明するために必要な文書を添付するメカニズムを提供します。こうした文書は関連製品に直接紐付けられるため、ユーザー自身や川下の取引企業がいつでも必要な時に確認することができます。

    FSCトレースとFSC EUDR対応モジュールなどのツールを組み合わせて活用することで、検証プロセスが強化され、データが充実し、サプライチェーン全体にわたって表示を連結することができます。これにより、規制への準拠に役立つだけでなく、持続可能で責任ある事業行動も促進されます。

  2. FSCトレースは、どのようにして製品関連データを変更不可能にするのですか?

    FSCトレースシステムでは、いったん取引内容の一致が確認(購入者と販売者の双方で合意)されたら、取引はブロックチェーンに記録され、その内容は変更不可能になります。つまり、それを変更するには、別の記録および変更が行われたことの通知が必要となります。このアプローチにより記録が後から改変されないことが保証され、データの完全性が確保されます。

  3. FSCトレースは、EUDR規定のプラットフォームであるTRACESと相互運用性がありますか?

    現時点では、欧州委員会はTRACESと外部プラットフォームとの相互運用性を確保する方法について情報を提供していません。

    しかしFSCでは、後日公開されるFSCデューデリジェンス報告システムを通してFSCトレースの相互運用性を確保しようと考えています。我々はTRACESに関する情報を注視し、欧州委員会が直接相互運用を可能にした場合は、ここで情報を提供します。

  4. FSCトレースを使用すると、どのようなデータを入手できるようになりますか?

    FSCトレースは、認証森林製品の原産地に関して、ユーザーに価値ある情報を提供します。FSCトレースではさまざまな標準データ欄が設定されており、そのそれぞれが、認証済みサプライチェーン内でよくある主要な懸念事項や、規制準拠のために必要な可能性のあるデータに関連しています。こうした中核的な入力欄を設けることにより、誰もが同じように確実に情報を交換できるようにします。

    さらに、FSCトレースでは参加者が独自のデータ欄を設定することもでき、各社がそれぞれ必要な特定データ項目を容易に共有できます。

    FSCトレースの中核データ欄の例は以下の通りです。 

    1. 樹種:ブロックチェーンでは、製品の製作に使われた特定の樹種または複数樹種の組み合わせを確認することができます。
    2. 製品タイプ:FSCトレースは、FSC製品分類(40-004Aに基づく)に従った製品タイプ(必須)と、世界中で国際貿易の記録や関税額の判断に使用されているHSコード(任意)の両方を記録します。なお、レイシー法やEUTR、EUDRなどの規制では、準拠するためにHSコードの使用が必須となっています。
    3. 数量・質量・重量:FSCトレースでは、取引を記録する際に数量または質量・重量のどちらか、または両方を単位として選ぶことができます。通常取引を数量ベースで記録している企業も、欧州市場へのアクセスを望む場合は、EUDRの要求事項である重量も含める必要があります。
    4. 地理的位置情報:FSCトレースでは、森林管理者が製品の供給源である伐採区画について地理的位置情報データを提出することができます。このデータ欄への入力は必須ではありませんが、EUDRなどの規則に準拠するためには重要である場合があります。
    5. 伐採時期:このデータはEUDRで要求事項として規定されています。FSCトレースでは、伐採(収穫)開始日と終了日を入力することができます。
    6. 生産国:このデータ欄も、規制準拠に関連しています。このデータは、サプライチェーンの各ポイントについて個別に記録することができます。
  5. FSCトレースは、アップロードされた地理的位置情報座標を森林破壊・森林劣化に関してチェックしないと聞きましたが、森林破壊についてのチェックは引き続き手作業で行う必要があるのでしょうか?

    FSCトレース自体は森林破壊・森林劣化の自動チェックを実施しませんが、そのような検証はFSC認証プロセスの基本的要素であるという点に留意することが重要です。

    FSC認証の審査は、資格を有する監査員が森林を現地で評価する厳格な審査であり、森林破壊・森林劣化の防止を目的とするFSC規格への確実な遵守を保証します。

    従って、FSCトレースはサプライチェーン内の透明性とトレーサビリティを向上しますが、森林破壊・森林劣化について規格の遵守を検証する責任は、既存のFSC認証審査プロセスにあります。つまり、これらの項目は認証プロセスの一環として専門の監査員により徹底的に審査されているため、森林破壊・森林劣化のチェックを手作業で行わなくても、FSC認証製品の完全性を信頼することができるのです。

  6. ユーザーは製品の由来に関する文書を添付できますか?

    FSCトレースでは、ユーザーが社会的責任に関するコンプライアンス書類、化学物質使用製品データシート、伐採許可証やその他の記録などの関連文書をアップロードして、タグをつけることができます。こうした文書の多くは供給源の森林に関するものですが、サプライチェーン上のすべてのユーザーが文書を添付することができます。

  7. FSCトレースではどのように地理的位置情報データを利用することができるのでしょうか?

    地理的位置情報データの収集は、森林管理者の責任です。この作業を支援するさまざまな技術やツールが市販されています。

    FSCトレースには、森林管理者が、このデータ、特に(EUDRで求められている)伐採区画に関するデータを任意でアップロードすることができる専用データ欄があり、アップロードされたデータは認証森林の境界線と照合して確認されます。

    FSCトレースにアップロードされた他のデータと同じく、地理的位置情報も川下の参加者と共有可能ですが、そもそもデータを共有するかどうかは、常にデータ提供者(この場合は森林管理者)の選択に任されます。

  8. EUDR準拠サプライチェーンにおいて、FSC管理木材はどのようにFSCトレースに組み込まれるのですか?

    FSC管理木材とは、許容される供給源に由来する「FSCミックス」ラベルのついた製品において、FSC認証原材料と混ぜることができる原材料です。これは通常原産地域まで遡って追跡されますが、EUDRが要求する正確な地理的位置情報データや伐採時期までは遡れません。

    管理木材は、CoC認証取得者経由でFSC認証サプライチェーンに入りますが、その際CoC認証取得者は、デューデリジェンスシステムを実施して管理原材料の定義が確実に満たされるようにします。このCoC認証取得者は森林管理者の役割を担い、FSCトレースに管理木材の原産森林データを入力します。

    将来のリリースでは、FSCトレースの使用がFSC管理木材を供給する非認証取得者まで拡張される可能性もあり、その場合は、CoC認証取得者がFSCトレースに原産森林データを入力する必要はなくなります。

  9. サプライチェーン全体がFSCトレースを使っていなくてもFSCトレースを使用することはできますか?

    サプライチェーンのすべての部分がプラットフォームに参加していなくても、FSCトレースを使用することは可能であり、その場合でもFSCトレースのシステムは取引データの収集や検証においてユーザーに直接的価値を提供します。しかしFSCトレースは、原産地の森林管理者に至るまですべての企業が参加した時に、最大の価値を発揮します。特に、EUDRなど供給源まで遡るトレーサビリティを要求する規制への準拠のためにFSCトレースを使用する場合は、すべてのサプライヤーがFSCトレースを使ってサプライチェーンへの販売を記録している必要があります。

    詳しい関連情報については、「FSCトレースは、他のシステムとも相互運用性がありますか?」の項もご参照ください。

  10. 当社では、顧客が当社に代わって事後的に請求書を作成しています。この場合でも、EUDRへの準拠にFSCトレースを使用することができますか?

    取引をFSCトレース上に記録し、欧州連合森林破壊防止規則(EUDR)で必要となるデューデリジェンス声明を作成するには、現在請求書番号が必要となっています。FSCトレースは、FSCライセンス取得者との協議に基づき、取引が完了した時点で購入・販売取引を追跡するよう設計されており、その際請求書番号を取引の参照番号として使用しています。

    FSCはFSCトレースの設計のプロセスにおいて、取引企業同士が取引を追跡する際の識別には請求書番号を使うことが最も多いことを発見しました。その結果、FSCトレースは、ライセンス取得者の既存の会計システムやERPシステムに対応し、コンプライアンスを実証する確実性の高い参照点として、請求書番号を使用しています。

    FSCトレースの初期リリース版では、請求書番号が取引識別の主な方法となっています。しかし、FSCではライセンス取得者のフィードバックを積極的に収集しており、将来は取引の追跡に関して請求書番号以外の代替手段も検討しています。