家具製造から設計・施工までを一貫して行い、「デジタル インテリアソリューション プロバイダー」として歩んできた株式会社オリバー。同社は2006年、国内家具業界で初めてFSC認証を取得し、社内外の協力体制の構築を進めながら、国立競技場貴賓席への家具の納入や大手飲食チェーンへの製品採用など、着実に成果を上げてきました。さらに2022年には自社プロダクトブランド「D&D」をFSC認証製品シリーズとし、2025年には思いを新たに「+U(プラスユー)」へとブランド名を変更。ゼロカーボンでの製品開発に挑戦するなど、持続可能なモノづくりにおいて新たな局面を迎えています。
お話を伺った方
株式会社オリバー 常務取締役 浦隅明弘さん
この記事でわかること
国内家具業界で初めてFSC認証を取得したオリバーの軌跡
FSC推進の基礎となったサプライチェーン構築と社内浸透のプロセス
FSCを軸にした「ゼロカーボンファニチャー」の取り組みと今後の展望
ゼロから挑んだFSC認証取得とサプライチェーン構築
オリバーがFSC認証を取得したのは2006年。当時、日本ではまだ認知が低く、取り組みはまさに未知への挑戦でした。推進役となったのは、現在、常務取締役を務める浦隅明弘さん。長らく製品開発に携わり、機能性に加えて「製品としての価値をどう高めるか」を模索する中で、FSCに出会ったといいます。
「顧客の信頼を得るために『安心・安全』は欠かせません。様々な認証制度を比較する中で、『認知度・高品質・厳格な基準』を兼ね備えたFSCが、最終的に残る価値だと確信しました。日本での知名度は低かったものの、WWFが推奨し国際的な信頼性が高いことに加え、認証制度が未整備の国でも通用する"万能さ”が、当社の事業方針とも合致していました」(浦隅さん)
しかし、実際にメーカーとしてFSC製品を安定的に提供するためには、様々なハードルを乗り越える必要がありました。まず家具に用いる成型合板の流通量が少ないこと。たとえ材を入手できても、FSC認証を取得した製造業者がほぼ存在せず、コスト的に見合うものを製造するのは難しい状況にありました。
また、オリバーはメーカーであると同時に、顧客のニーズに応じて空間づくりをトータルで手掛けており、ファブレス※に近い形態で多様な製品を全国のサプライヤーに製造委託しています。そのため、FSC製品を幅広く供給するためには、サプライヤーの協力が欠かせませんでした。※ファブレス:企画・設計・販売に特化し、製造を専門の外注先に委託すること
「約20社のパートナー企業に粘り強く説明を行い、FSC CoC認証の取得をお願いしました。当社がまとめ役となって認証取得の費用を抑える工夫もしましたが、中小企業にとっては決して軽くない投資です。それでも未来への価値を信じて協力していただけたことで、FSC認証製品を安定的に提供できるようになりました」 (浦隅さん)
「生きている森」の資源を活かす事業が、社員の誇りを醸成
FSC製品のサプライチェーン構築や認証取得支援と並行して、オリバーでは社内教育にも力を注いできました。FSCを事業で積極的に活用するためには、FSC認証への深い理解と、それを活かそうとする意識の醸成が不可欠と考えたためです。
「社内で説明会や資料配布も行いましたが、最も効果的だったのは、FSCの森を見学する機会を設けたことです。関係する社員と家族が参加し、”森が生きている”ことを肌で感じられたと思います。さらに現地で速水林業代表の速水さんにお話を伺ったことで、森の資源を活かし次世代につなぐ重要性が、具体的なイメージとして社員一人ひとりに根づきました」(浦隅さん)
しかし、営利企業としては、どんなに良い取り組みでも、製品としてお客様に評価され、選ばれなければ継続は難しいもの。そこで、オリバーでは社内にFSC推進チームを発足させ、官公庁や環境意識の高い企業に向けた提案や、カタログでの訴求方法などについて議論し、ブラッシュアップを重ねてきました。
「実は20年の間、ずっと同じ熱量を維持できたわけではありません。日本での認知がなかなか上がらず焦りを感じた時期もあり、私自身が部署異動で現場を離れ、社内の関心が薄れた時期もありました。サプライヤーも内心では『本当に続けるのか』と感じていたかもしれません。そんな中でも『続けるべきだ』という思いだけは手放しませんでした」(浦隅さん)
そんな地道な積み重ねが、2020年頃からのSDGsの意識の高まりとともに、成果として花開くことになりました。国立競技場の貴賓席への家具の納入や、大手コーヒーチェーンへの導入など、大きな実績が積み重なり、社内には取り組みへの自信と未来への確信が生まれていきました。
「もともとオリバーのお客様は意識が高い方が多く、『間違いのないもの』を求める傾向があります。時代とともにニーズはいっそう高まり、その一歩先を目指そうという思いがFSC認証活用のモチベーションにもなっています。最近では、お客様に『FSCがこの価格と品質で実現できるとは!』と喜んでいただき、社員からも『FSCに関われることを誇りに感じる』という声が上がっています。20年前から蒔いてきた種がようやく根付いたことを実感し、非常に嬉しく思っています」(浦隅さん)
「+Uシリーズ」でユニバーサル×サスティナブルな製品展開を実現
受注型での成功体験を経て、オリバーは2022年7月、自社のファニチャーブランド「+U(プラスユー):旧名称D&D」の全製品をFSC認証製品へと切り替える戦略を打ち出しました。
「『ユニバーサル(普遍的)』というコンセプトがFSCの理念と符合し、ブランドとしての価値を強化できるものと考えました。普遍性の高いデザインや機能性はタイムレスな価値を持ち、事業のサステナビリティにも通じています。ブランドのシンプルな世界観とFSCの相性が良く、認知が広がるとともに、売上も伸長しました。それが社内やサプライヤーへの刺激となり、好循環が生まれています」(浦隅さん)
ただし、オリバーが重視するのは、「デザインや機能性など製品としての魅力が第一であり、選んだ結果としてFSCだった」という状態です。あくまでFSCはベースであり、やがては当たり前の基準になるべきもの。それだけに、「FSCは国際基準としての厳格なスタンスを崩すべきではない」と浦隅さんは強調します。
「環境配慮が注目される今、世間では実態を伴わない雰囲気的なアピールも見受けられます。しかし、FSCは倫理・論理ともに信頼できる認証です。その厳格さを保ちつつ、SDGsやカーボンニュートラルなど他の指標との関係性をわかりやすく示せると、さらに価値が伝わると考えています」(浦隅さん)
現在は、原料調達や製品化の取り組みは十分なレベルに達しており、今後はアイテム構成やコストバランス、訴求方法のアップデートが課題だといいます。オリバーは「環境と人にやさしい製品開発」という理念のもと、価格や見せ方、流通方法まで含めた、"手に取りやすさ”を高めることで、ブランドの拡大を目指しています。
FSC材を軸に「ゼロカーボンファニチャー」を目指す
2024年10月、オリバーはさらに踏み込んだ取り組みとして、製品のライフサイクル全体で二酸化炭素(CO₂)の排出量を実質ゼロにするという「ゼロカーボンファニチャー※」を発表しました。
※ゼロカーボンファニチャーとは、材料調達や製造でのCO₂排出量削減に加え、リサイクルを通じて木材に固定されたCO₂を長期一定期間維持することで、当社独自基準の「CO₂排出量実質ゼロ」を実現した家具です。

製品に使用される木材に固定・貯蔵された炭素量をマイナス分として捉え、原料調達から製造、流通、廃棄に至るすべてのCO₂排出を合算して総量を実質ゼロとする画期的な取り組みです。
再生可能エネルギーの採用、効率的な木材の活用、工場への運搬距離の調整など、細かな調整を積み重ねながら実現を図っていきました。廃棄段階ではパーチクルボードへリサイクルする仕組みも同時に構築し、CO₂の長期間固定を図る取り組みにも着手しました。
「どれだけ工夫を重ねて製品のCO₂の排出をゼロに近づけても、木の伐採後に森が再生されなければ意味がありません。しかしFSC材ならば、適切な森林管理によって新たな植林や木の成長でCO₂が吸収されることが保証されています。つまり、ゼロカーボンとFSCを組み合わせることで、より高度で信頼性の高い環境配慮製品となるのです。ゼロカーボンファニチャーは非常に難しく、一気に展開とはいきませんが、少しずつでも着実に品数を増やしていきたいと考えています」(浦隅さん)
こうした思いを込めて、2025年12月には、FSC®認証家具シリーズを「+U(プラスユー)」へと名称変更し、新カタログ Vol.5を 発刊。CO₂総排出量実質ゼロを実現する「ゼロカーボンファニチャー」を新たにラインアップに加え、環境配慮性能とデザイン性をさらに進化させています。
※「+U」Webサイト:https://www.oliverinc.co.jp/products/plus-u/
FSC認証取得から20年、「難易度が高いほど、取り組む価値がある」と語る浦隅明弘さん。その言葉から、製品品質とサステナブルの両面からより高みを目指そうとする、揺るぎないオリバーの姿勢が伝わってきました。
認証取得者名:株式会社オリバー(FSC-C013448)
