世界の森林問題とFSC

森林は多様な生物の住処であり、木材、食料などの資源や水や空気といった生態系の恩恵を与えてきました。今日でも、6000万人の先住民族を含む約3億5000万人が毎日の生活の糧を、そして長期にわたる生活基盤を森林に依存しています。

Worlds promlem and FSC
FSC AC

今、地球では森林が急速に失われています。2020年の国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、2015~2020年の間に平均で現存する森林が年間1020万ha減少しており、これは2.2秒ごとにサッカー場一面分の森林が減少していることになります。新たに森林が拡大している地域もありますが、世界の森林の正味面積は2010~2020年の間にも年間平均470万ha減少しており、減少傾向に歯止めがかかっていませんまた、面積の減少だけでなく、天然林が人工林に変わるなど、森林の質の低下も深刻です。森林減少は環境、社会、経済に深刻な影響をもたらしています。

社会的には、森林に生活を依存する多くの人々の生活や文化が脅かされます。環境面では、多くの野生動物の住処が奪われ、絶滅の危機に瀕しています。生態系が失われると、水や土も劣化し、災害にもつながりやすくなります。2002~2011年における人間の活動に起因する温室効果ガスである二酸化炭素排出量のうち、10%は森林の減少や土地利用の変化によるものと考えられ、森林の破壊は地球規模の気候変動につながっています。経済的にも、特に開発途上国で深刻な違法伐採による世界の経済的損失は毎年約2兆2000億円と言われています。

また森林は伝統的な暮らしにおいても現代的な医療制度においても重要な役割を果たしている薬用植物の宝庫です。世界の人々のおよそ80%が健康管理のための主なニーズを植物から作られた薬に頼っています。また新薬の多くも自然由来の原材料に頼っています。例えば1940年代以降に発表された抗がん剤の半分は自然物またはその誘導体です。

このような貴重な森林を守るためにはどうしたらいいのでしょうか。法律を作り取り締まればいいという人もいるでしょう。しかし、世界には必ずしも民意を得ていない政府もあり、国政が民主的に、国民のために機能しているとは限りません。また、環境や立場の弱い人々のことも十分配慮した法律が作られているとも限りません。さらに、法律があってもそれが守られているとも限らず、国内で許容される管理方法も、必ずしも国際的に受け入れられるものだとは限りません。

行政によるアプローチだけでは限界がある中、国際的に統一され、NGOや民間企業等が問題の実質的な解決へ向けて協調し、自ら実施でき、それを客観的に評価できる仕組みが必要です。FSCはこうしたボトムアップの取り組みであり、市場メカニズムを利用し、消費者の理解と購買力により責任ある森林管理を支えてゆく仕組みです。こうしたボトムアップ的なアプローチ、そして行政側のトップダウン的アプローチは、相反するものではなく、多数の利害関係が複雑に絡み合う中、むしろ相互補完的に作用するものと考えられます。