現在FSC国際事務局によりセントラライズド・プロセスにより進められている日本におけるナショナルリスクアセスメント改定(以下、便宜的にセントラライズドナショナルリスクアセスメント、CNRA)について、多くのステークホルダーの皆様よりご懸念、ご意見をいただいております。

FSCジャパンは、これらのご意見を真摯に受け止め、2026年2~3月に理事会において組織としての立場および今後の対応について協議いたしました。これまでFSCジャパンとしてCNRAプロセスについて説明が不十分であり、誤解やご懸念を招く結果となりましたことについて誠に遺憾に存じます。

以下に説明が不足していた部分について改めて説明し、FSCジャパンとしての見解を共有させていただきます。
 

CNRAプロセスにおける役割

現在進められているNRAのセントラライズドプロセスは、新たな手順 FSC-PRO-60-006b V2-0「Risk As-sessment Framework(リスクアセスメントの枠組み)」 に基づくリスクアセスメントを各国で迅速に整えるためFSC国際事務局主導で同事務局から任命されたコンサルタントが草案作成を担い、最終的に同事務局が承認する仕組みです。日本における草案作成を担うコンサルタントについては、同事務局が実施した公募プロセスによってPreferred by Nature(PbN)社が選定されています。

NRAセントラライズドプロセスにおける役割
FSCジャパンはFSC国際事務局の日本におけるネットワーク・パートナーとして、FSC国際事務局から任命された独立したコンサルタントに情報収集の協力・情報提供および意見提出を行っておりますが、最終的な意思決定に関わることはCNRAプロセス上できません。
 

今回のNRA改定の経緯・位置づけ

このたびの全世界的なNRA改定は、3年をかけた調査・協議の末2019年に発表された「FSCミックス製品および管理木材に関する戦略 」に基づくもので、管理木材およびFSCミックスにFSC制度が依存している現状を踏まえ、デュー・ディリジェンス体制の強化および管理木材の水準の引き上げ、管理木材への依存の軽減を目指すものです。この本来の目的にEUDRの要求事項が加わったことにより、EUDR施行期限に合わせるべく、より高い水準の新しいリスクアセスメントの策定が急がれています。

新NRAの位置づけ
日本では、FSC国際事務局主導のセントラライズドプロセスが行われることとなり、前述の通りPbN社が担当しています。2025年12月26日~2026年2月6日にパブリックコンサルテーションにかけられた第1草案については、前回のNRAとの整合性やリスク判定に対する疑念のご意見が多くありましたが、評価基準自体が変更されたため単純な比較は難しいと考えられます。

こうした状況の中、FSCジャパンとしては、今後も利害関係者の方々と情報共有と意見交換の機会を可能な限り設け、引き続き日本国内の現状を踏まえた意見をPbN社及びFSC国際事務局に対し提出し、検討を要請して参ります。
 

リスク評価に関するFSCジャパンの考え方

パブリックコンサルテーションではリスクアセスメント草案の中立性やリスク判定の根拠について多くの意見が寄せられた中で、FSCジャパンとしては新規手順に従い現実的かつ実行可能なリスク評価およびリスク低減措置が検討されるべきであるとの認識を共有しました。日本の森林管理の実態や法制度、また国内の利害関係者からの意見を踏まえ、FSCジャパンとして3月11日にPbN社に対し、以下の内容の見解を「日本のCNRA草案への要請」として提出いたしました。

  • 先住民族の権利(指標43, 48):日本における先住民族、とりわけアイヌの権利に関する課題については、無視できないリスク(Non-negligible risk)とすることが妥当であるとの認識を共有しました。ただしこれまでのリスク軽減の取り組みの評価と、更なる対話と理解促進を通じた状況改善に寄与していくことが重要と考えております。
  • 伐採許可(指標4)及び男女平等(指標41):コンサルタントによる第1草案で「無視できないリスク」とされていたこれらの指標については、日本ではこれらに対応した法制度および監督体制を有していること、他産業や他国と比較して突出して高リスクであると断定する十分な客観的証拠は現時点で確認されていないことなどを考慮し、FSCジャパンとしては原則として「無視できるリスク(Negligible risk)」との立場を基本といたします。しかしながら、問題事例が実際に存在すること、林業における労働災害やジェンダー課題が社会的課題として認識されていることも事実であることを鑑み、指標のリスク評価においてこれらの課題を記載することによって懸念を共有し、引き続き調査・情報収集を行い、日本林業において中長期的に改善を促していく姿勢を明確にいたします。
     

今後の予定

FSCジャパンは、CNRAがFSC国際事務局によって決定されるまで可能な範囲で利害関係者の方々と意見交換を実施しコンサルタントに共有していく所存です。今後、PbN社によって修正草案がFSC国際事務局に提出された後、FSCジャパンはその草案をレビューし、国際事務局にその意見を提出します。

FSCジャパンは、環境配慮や社会・人権分野への配慮を十全に行い、日本の林業および木材産業の実情を踏まえた現実的かつ実効性のある形で制度運用を目指しております。今回のプロセスを契機として、利害関係者の皆様とより深い信頼・協力関係を構築し、さらに透明性を高め、説明責任を果たす組織運営を進めて参ります。今後とも、ご協力・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。