持続可能でない熱帯木材への投資や取引は、森林劣化と森林破壊を引き起こしてきました。FSCは自然に根ざした解決策として、企業の調達リスクの軽減や持続可能性へのコミットメント達成を支援します。
FSCはUN-REDDプログラムと提携し、「FSC x UN-REDD Lower Mekong Initiative」を発足し、持続可能な熱帯木材の取引を促進するための取引ネットワークや情報ハブの確立に取り組んでおり、本セミナーはこのイニシアチブの一環として開催されました。セミナーでは非常に活発な議論と情報交換が行われ、業界の主要な関係者ががつながる良い機会となりました。このセミナーを通じて、アジアパシフィック地域の供給側企業と需要側企業が一緒に、より持続可能な林産物の取引に向けた呼びかけを行っていくことを表明しました。セミナーで話された主な内容は以下の通りです。
セミナーで話された内容
Mr. John Halkett:木材輸入業者連盟 統括部長
- 東南アジアの森林は、深刻なプレッシャーにさらされており、東南アジアの国々がオーストラリアへの供給量を増やすことができるか不透明である。
- パプアニューギニアが供給国として最も大きな可能性を見せているが、ガバナンス、持続可能性、合法性に関する大きな問題を抱えている。
- オーストラリア全体の問題として、需要の大きさと木材調達の難しさである。これまで調達をしてきた供給源は限られているため、連盟としては新たな調達先を探している。
Mr. Malcolm Scott:ニュージーランド輸入木材貿易グループ 議長
- ニュージーランドにはパプアニューギニア、南米の国々、ソロモン諸島、アフリカの国々、フィジーなどから木材を輸入してきた長い歴史がある。世界中で持続可能な認証熱帯広葉樹材があるところでは、ほぼニュージーランド輸入木材貿易グループを見つけることができる。
- ニュージーランド輸入木材貿易グループは持続可能性に重きを置いている。マーケットに対して、持続可能性の持つ価値に気が付いてもらうためのイニシアチブにも関与している。
- 施主や設計者には、価格と入手の容易さだけに目を向けてほしくない。持続可能性を意思決定のプロセスの一環として取り入れてほしい。
- ニュージーランド輸入木材貿易グループは、企業や輸入業者と一緒に、持続可能な広葉樹材の長期的な重要性についてマーケットを教育していきたい。
Mr. Budi Hermawan:PT. Kayu Lapis Indonesia マーケティングディレクター
- 気候変動と炭素排出のニュースを聞かない日はない。いち企業として、私たちは気候変動に対する行動を起こしたい。そのための戦略の一つは、木造建設物を普及させることである。
- 私たちは森林におけるファンド教育者、地方へのリモート教育、読み書きを教える講座の研究、そして持続可能な林産物の生産を通じたコミュニティ関与の推進、効率的な原材料利用、低インパクト伐採、自然林の持続可能な管理、サプライチェーンの透明性、木材の責任ある調達のための奨学金制度も提供しています。
- 適切に管理がされ持続的に伐採される森林には、環境および経済的なメリットがある。
- 環境的なメリットとして、森林が90%の炭素貯蔵量と生物多様性を保持できる。
- 経済的なメリットとして、安定的な木材供給および森林に依存する人々に対する仕事の提供ができる。
- 持続可能な林業は、環境、野生生物、コミュニティのニーズのバランスをとることができる。FSCが建設業に与えるメリットも多く、森林破壊ゼロ、気候への良い影響、先住民族の権利の尊重、労働者への公正な賃金の支払いや適切なな労働環境の提供などがあげられる。
- プレハブ構造には、工場内で製造ができるため省エネルギー、省廃棄物かつ建設が早くできるというメリットがある。
石川 博明 氏:三菱地所レジデンス株式会社 経営企画部 サステナビリティ推進グループ 専務付
- 建設業界で熱帯木材が使用される理由が3つある。
- 1つ目は材料の強度の強さである。繰り返し利用できるため経済合理性が高い。
- 2つ目は変形が少ないことである。通常木材は水に濡れると変形または膨張するが、熱帯木材は水にぬれても変形しにくく、高精度につながる。
- 3つ目は加工のしやすさである。細かい細工がしやすく、作業性がよい。
- 熱帯木材は、建設工事費の低減や工事の省力化に大きく貢献している。現場からも国産合板よりも熱帯木材合板を好む声が聞こえている。
- 熱帯木材合板は、マンション工事のものになっています。しかし、森からの恵みを使っている以上、無作為に使い続けることはできない。
- 私たちの結論は、持続可能な森を守る人たちを応援すること。そのために、「この合板はどこから来ているのか」そして「持続可能な森がどうやって守られるのか」を知る必要がある。また認証された材料を使い、トレーサビリティを工事までつなげることも必要である。
- 三菱地所グループは2030年までに全ての型枠パネルを認証材に切り替える。FSC認証材を使用することで生産地の生産者を応援できると信じている。
- しかし課題もある。認証材を使うことで建設工事費が増加する。これは、トレーサビリティの保証を管理するためのコストによって一般材よりも認証材の価格が高いためである。
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