世界中の森林破壊やそれに伴う社会環境的な影響は、特に熱帯地域の国において顕著に見られます。森林破壊は気候変動に対する努力や生物多様性を守る努力を台無しにしてしまいます。

いくつもある森林破壊の原因ですが、中でも農地の拡大が一番の原因となっており、インフラ整備や都市開発、そして不適切な森林管理も森林破壊の原因となっています。

そのため、現在では多くの企業が農産物・林産物の使用に関して「森林破壊につながらない」ものを使用するという方針を採用しています。農産物に限れば、直接的に森林破壊に関わる製品の調達を避ければ十分かもしれませんが、一方で林産物を使用する企業の場合、調達方針に森林劣化の防止が含まれていることが少なくとも同じくらい重要です。NPO法人The Prince's Charityによる最近の報告では、現在の人為的二酸化炭素排出の8%は、熱帯における森林破壊が原因だと結論づけられていますが、一方で熱帯における森林劣化は排出の6~14%を占めていると書かれています。

FSCは森林破壊と森林劣化を防ぐ
FSCには、認証林管理者が森林を維持し、森林の構造、機能、生物多様性、生産性を維持・向上させるための厳しい要求事項がいくつもあります。例えば、森林管理の計画と施業のモニタリングに関する指標、リスク評価や森林に対する影響の評価に関する指標などがあります。
また次のような直接的な要求事項もあります:

  • FSCは、森林破壊、自然林の人工林への転換を認めず、FSC認証林内のいかなる形での森林生態系劣化も認めません 。これは、高い保護価値 を伴う地域の維持・向上に関する要求事項によっても保証されます。
  • FSCは、森林劣化を防ぎ、あらゆる形態での森林劣化を回避・補償するために、森林管理の悪影響を最小限に抑えることを森林所有者や管理者に要求しています。2016年から適用される国際標準指標により森林管理要求事項が国際的により一貫すると同時に、森林の種類や状態、規模や社会経済的な状況に応じた柔軟性も確保します 。
  • FSCは1994年以降に自然林から人工林に転換された森林の認証を認めていません 。現在、FSCはこのルールを見直しており、劣化した森林の転換による環境や社会面での好影響を含め、どのような条件下で認めることができるか検討中です。

FSCは認証林の所有者や管理者がこれらの要求事項を守ることを確実にする強固な仕組みを持っています。この中には、第三者による認証と管理、専門機関による認証機関の認定制度、年次監査、利害関係者へのコンサルテーション、紛争解決システム、組織とFSCとの関係に関する指針 などがあります。

FSCが持つ影響力
2015年11月時点で世界中に1億8,700万ヘクタールのFSC認証林があり、森林破壊と森林劣化につながらない管理がされています。これは世界中の管理森林の15%に当たります。認証林のうち、およそ2,100万ヘクタールは熱帯および亜熱帯にあります。

FSCの推定によると、2014年の1年間で世界中のFSC認証林から3億立米の木材が産出されました。これは世界の丸太生産量の16.6%に当たります 。

また多くの世界的な企業がこれからもFSC認証材の使用割合を増やしていくという公約をしています。例えば、キンバリー・クラークは2025年までに自身のティッシュ生産に用いる木質繊維の90%を環境により良い供給源から調達すると発表しています。このような供給源とは、FSC認証繊維、リサイクル繊維そして持続可能な代替繊維です 。

イケアの例では、2015年には使用木材の50%がFSC認証材かリサイクル材になると見込まれており、2020年までにすべての木材、紙、板紙をFSC認証材かリサイクル材にすると宣言しています 。この決断に従い、2015年のカタログはFSC認証紙に印刷されており、イケアによるとこの際に刷られた2億1,700万部という数は、FSC認証製品として史上最大の部数であったとのことです 。

またチリの会社であるAraucoは2013年にFSC認証を取得しました。この会社は世界最大の林業会社のひとつであり、2014年には多くの製品に加え、310万トンのパルプを生産しました 。FSC認証取得過程において、Araucoは6万2,763ヘクタールの高い保護価値を含む地域を特定しました。これには37の生態学的に重要な地域が含まれ、社会、文化的に重要な地域が69含まれます。現在ではそれぞれについて積極的な保護計画が作成されています 。

科学データに基づくFSC認証林管理の影響
森林破壊の回避に対するFSC認証の影響評価は産業界および研究者の両者から求められています。森林劣化について定量的な評価をすることは難しく、また森林利用や森林管理に関係する数多くの要素の中から認証の影響を見極めることは容易ではありません。しかしながら、長い間多くの研究者によって、認証林は森林破壊や森林劣化につながらない管理を可能にしていることを示す科学的証拠が集められています。以下に熱帯林におけるいくつかの例を紹介します 。

グアテマラ
2008年にHughellとButterfieldがグアテマラにあるマヤ生物圏保護地区(MBR)における森林認証の影響をまとめ、 「ペテン県の森林資源の保護に関してFSC認証は明確にきわめて重要な役割を果たしている。今後MBRの森林を維持するために、その役割は更に重要な役割を担うことになるだろう」と述べています。FSC認証林内の森林破壊割合はほぼゼロでしたが、木材伐採、非木材林産物の採取が禁止されているはずのその他の保護地区における森林破壊割合は顕著に高く、また増加傾向にありました。

カメルーン
2011年にCeruttiらは2009年以降にFSC認証を取得した10の森林管理企業を調査し、合法木材と認証木材の違いを発見しました 。認証要求事項が法律による制限量よりも低い伐採制限を設けていることにより、次回の伐期に向けた価値のある樹種の更新、そして伐採後の森林への損傷が少ない点において明確な好影響が見られたと書かれています。このことは森林劣化に対する効果的な措置であることを意味します。

南アメリカ
The Nature Conservancy (自然保護協会)は、FSC認証が土地の管理において好影響をもたらすと考えています。南アメリカにおける調査では森林認証が生物多様性保全面で間接的に与える影響について調べました。結果は、ボリビアの3つの認証林においてFSC認証は種の多様性に関して悪影響を与えておらず、ブラジルの大西洋森林の一部において、認証林は流域内の他の場所に比べてより自然な状態を維持しているというものでした。認証により、水系の保護の拡大、高い保護価値を有する地域の特定や保全、幅広い貴重種の保護を通じた生物多様性保全が推進されるようになりました。自然地域における分析では、「何も管理をしない」場合、効果的に保全されたレムナントの割合は17.3%でした。一方「FSC規格に従った管理」をした場合、効果的に保全された自然レムナント森林の割合は55.8%でした。つまり、事実上多くの場合、熱帯の土地管理者にとってFSCは、従来の木材収穫に代わる現実的な方法となるということです。

世界的な証拠
2011年にDametteとDelacoteは77ヶ国におけるFSCを含む認証林の2005年データの分析をしました。木材伐採量の多い国では森林破壊の割合も大きい傾向があることが分かり、世界における森林伐採が持続可能でないことが示唆されました。次に国際比較分析をしたところ、森林認証と森林破壊に負の相関があることがわかりました。つまり、森林認証が持続可能な森林管理のよい指標となることが示されました 。


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