改定農薬指針は、有効成分特有の危険性だけでなく、使用方法も考慮して、リスクを抑制できるように構成されました。

FSC農薬指針の短期的な目標は、使用されている化学合成農薬の全体的な使用量と使用回数を減らし、最も危険な化学合成農薬の使用を停止することです。また人間の健康及び環境に関連するリスクを最小限に抑えるための最良の方法を普及させることも含まれます。

指針の長期的な目標は、FSC認証林における化学合成農薬の使用を停止することです。

指針の完全実施のためには、指針に基づく国際標準指標(IGI)の策定と、その国内規格への反映が必要です。

今回の改定は、2年掛けで行われ、この間にワーキンググループ(作業部会)による会議が30回以上行われ、また2度のパブリックコンサルテーション(意見公募)が行われました。

現在日本の林業で使用されている農薬のうち、主なものについて改定HHP一覧ではどのグループに分類されているのかを抜き出しました。

上記の通り、禁止HHPは原則使用できなくなります。高度制限HHP、制限HHPは環境・社会リスクアセスメントを実施してからでないと使用できません。非常に危険な農薬(HHP)一覧に記載されていないものであっても、化学合成農薬を使用する際には最低限の環境・社会リスクアセスメントが求められます。

注:特に殺虫剤を使用されている場合はご注意ください。

殺鼠剤
リン化亜鉛(Zinc phosphide):FSC高度制限HHP

シカ等の忌避剤
コニファーなどのジラム系(ziram):FSC高度制限HHP
ヤシマレント、ヤシマアンレスなどのチラム系(チウラム系)(Thiram):FSC高度制限HHP
ツリーセーブなどのイソプロチオラン系(Isoprothiolane):HHP一覧未掲載

殺虫剤
エコワン3 フロアブルなどのチアクロプリド系(Thiacloprid):FSC禁止HHP
マウントT7.5B油剤などのフェンチオン系(Fenthion):FSC禁止HHP
スミチオンなどのフェニトロチオン系(Fenitrothion):FSC高度制限HHP
キルパーなどのカーバムナトリウム塩系(metam sodium):FSC制限HHP(ただし、キルパーは土壌中で速やかに分解し、主にメチルイソチオシアネ-ト(MITC)となる。MITCはFSC禁止農薬である)
グリーンガードなどの酒石酸モランテル系(Morantel tartrate):HHP一覧未掲載
センチュリーなどの塩酸レバミゾール系(Levamisol hydrochloride):HHP一覧未掲載
NCSなどのカーバム系 (Metam):非HHP一覧記載農薬(ただし、NCSは土壌中で速やかに分解し、主にメチルイソチオシアネ-ト(MITC)となる。MITCはFSC禁止農薬である)
ウッドキングDASHなどのトリホリン系(Triforine):HHP一覧未掲載

除草剤
ラウンドアップなどのグリホサート系(Glyphosate):FSC制限HHP
ケイピンエースなどのイマザピル系(Imazapyr):HHP一覧未掲載
ザイトロンなどのトリクロピル系(Triclopyr):HHP一覧未掲載
クロレートSなどの塩素酸ナトリウム系(Sodium chlorate):HHP一覧未掲載

改定指針のポイントは?

改定農薬指針が8月1日に発効することを受け、これまで実施されていた「農薬使用に関する特例申請」の制度が廃止されます。この日以降新規の特例申請は受け付けることができなくなります。この他主なポイントは以下の通りです:

  • HHPの特定のために参照する基準にリスクに基づく優先順位を付け、その結果HHPを「使用禁止」「高度使用制限」「使用制限」の3グループに分けた。これらは非常に危険な農薬(HHP)一覧に掲載されている。
  • 「使用禁止HHP」は、緊急事態と政府による使用命令の場合を除いて、原則使用禁止となる。
  • 「高度使用制限HHP」と「使用制限HHP」は、認証取得者が環境・社会リスクアセスメント(指針内にテンプレート有)を実施し、関連リスクを特定及び評価し、リスク回避・低減措置の実施によってこれらのリスクを抑制している場合に限り使用できるようになった。
  • 認証取得者がHHP使用のための条件を満たしているかは、認証機関が通常の監査の際に確認をする。
  • HHPリストに掲載されていない農薬の使用についても、最低限の社会環境リスクアセスメントを実施して、悪影響がないことを確認するか、または悪影響を回避・軽減した上で使用する必要がある。

8月1日以降の改定農薬指針への移行プロセスについて、詳細は以下の文書をご確認ください。

FSC_report_1559526425_file.pdf
PDF, サイズ: 286.12KB