HCV の概念の発達
保護価値の高い森林(HCVF)の概念は、1999 年にFSCの森林管理規格原則 9 として生み出されました。これは、社会的、文化的、環境的に重要な場所を特定し、その生態的、社会的価値を維持し、木材生産の持続可能性を保証するためのツールとして生み出された ものです。その後、保護価値は必ずしも森林に限られず、保護すべきはそこにある価値だという考え方か ら、高い保護価値(HCV)という表現に変わっていきました。 1999 年の誕生からこれまで、この HCV という概念は発展を重ねながら気候変動緩和対策に関する気候・地域社会・生物多様性プロジェクト設計スタンダード(CCB スタンダード)、パーム油の RSPO、大豆の RTRS、サトウキビの Bonsucro 等、様々な認証に取り入れられてきました。
HCV の定義
2015 年に発表された FSC 森林管理認証の原則と基準第 5-2 版(FSC-STD-01-001 v5-2)では、HCV は以 下のように定義されています。
カテゴリー |
定義 |
HCV1 |
種の多様性:世界、地域または国レベルで重要な固有種と希少種または絶滅危惧種を含 む生物多様性が集中している場所。 |
HCV2 |
景観レベルでの生態系とモザイク:世界、地域、国レベルで重要であり、数多くの自然 発生種の存続可能な個体群が本来の分布や数で存在している原生林景観、大規模な生態 系と生態系のモザイク。 |
HCV3 |
生態系と生息・生育域:希少、危急または絶滅が危惧される生態系、生息・生育域*ま たはレフュジア(退避地)。 |
HCV4 |
不可欠な生態系サービス:集水域の保護や脆弱な土壌と斜面の侵食や崩壊の防止を含 む、危機的な状況において重要な根本的な生態系サービス。 |
HCV5 |
地域社会のニーズ:地域社会または先住民族との協議の下で特定された、地域社会また は先住民族の基本的な生活(例:生計、健康、栄養、水など)に欠かせない場所と資源。 |
HCV6 |
文化的価値:世界的または国家的に、文化的、考古学的または歴史的に重要な場所、資 源、生息・生育域と景観、及び/または地域社会または先住民族との協議の下で特定され た、地域社会または先住民族の伝統文化にとって文化、生態、経済または宗教/精神上の 側面からに非常に重要な場所、資源、生息・生育域と景観。 |
FSC 認証制度における HCV の位置付け
HCV の保護は、FSC が掲げる森林管理の最重要要件の 1 つであると言えます。責任ある森林管理のための 10 原則のうちの 1 原則が HCV の保全に充てられているだけではなく、HCV の破壊は管理木材評価の際のFSCが容認しない5つの木材カテゴリーの1つに挙げられている他、「組織とFSCとの関係に関する指針」におけるFSCが許容できない活動の1つにも挙げられています。つまり、HCV が森林管理により脅かされている 森林に由来する木材は、FSC のシステムから完全に排除される仕組みになっています。