欧州委員会は、EU森林破壊防止規則(EUDR)の要求事項をさらに明確にする予定です。しかし、EUDRの遵守に向けた取り組み開始を待つ必要はありません。
2024年12月31日までにEUDRに適合するために、FSC認証取得者やライセンス取得者含む企業が、今すぐできる6つのステップをご紹介します。
FSCは、サプライチェーン全体の関係者がEUDRの合法性と持続可能性に関する義務、およびヨーロッパや世界のその他の持続可能性に関する関連法規を満たすことができるよう、システムの強化と新たな統合ソリューションの開発を続けています。
ステップ1:対象となる商品・製品のインベントリリストの作成
EUDRは、木材、ゴム、パーム油、大豆、牛肉、コーヒー、カカオなどの対象商品・製品のサプライチェーンに関わる事業体を対象としています。木材は、EUDRにおいて、合法で森林破壊がないだけでなく、「劣化がない」ことが求められる唯一の商品です。
製品や原料がEUDRに含まれるかどうか不明な場合は、EUDR規則の付属書Iを確認します。付属書Iには製品の概要が記載されています。例えば、多くの木材、パルプ、紙はEUDRの適用範囲に含まれます。ゴムに関しては、新品のニューマティックタイヤ(一般的なタイヤ)がEUDRの適用範囲に含まれます。付属書の全文はこちらから入手できます。
製品がEUDRの適用範囲に含まれるかどうかがまだ不明確な場合は、各製品を以下の基準で評価することをお勧めします:
- その製品は対象品目の一つから作られているか?
- その製品は、付属書1に記載されているHSコードのいずれかを使用しているか。
両方の質問の回答が「はい」の場合、その製品は、EUDRの対象です。いずれかの質問の答えが「いいえ」の場合、その製品は対象外です。
FSC認証を取得している場合は、どの製品がFSC認証を受けているかを特定し、これらの製品のHSコードと FSC認証の製品グループの両方を追加することもお勧めします。この追加作業は、EUDRの対象に含まれるが、まだFSC認証の範囲には含まれないため、潜在的にリスクとなる製品を特定するのに役立ちます。
ステップ 2:FSCの新しいモジュールの要求事項案を確認する
FSC EUDR対応モジュールは、FSC認証申請者またはFSC認証取得者が、EUDRのデューデリジェンス義務に対応するため認証範囲を拡大して自主的に使用するための規格です。
FSC EUDR対応モジュールは、以下の枠組みと要求事項を定めています:
- 情報収集、リスクアセスメント、リスク軽減を含む、EUDR遵守をサポートするデューデリジェンスシステムの導入
- 製品の原産地に関する正確な情報(位置情報と生産時期)の収集と報告
- 森林破壊を伴わない原材料のみがFSCのCOCに入ることの保証
FSC EUDR対応モジュールで提案されている追加要求事項は、このモジュールに関する情報キット(英語)をご覧いください。また、このモジュールのどのような要求事項が自社に適用されるかは、「ユーザータイプ」に基づいて異なります。こちらのインタラクティブ・ユーザージャーニー・ツール(英語)でご確認ください。
ステップ3: EUDRの要求事項に照らして現在のデューディリジェンスシステムを見直す
EUDRは、森林由来のサプライチェーンの事業者や仲介・流通業者に対し、商品をEU市場に出す前に包括的なデューデリジェンスを実施することを義務付けています。
デューディリジェンスの義務は、欧州委員会がベンチマークとしている特定の国のリスクレベルに応じて異なりますが、現在デューディリジェンスシステムを導入している場合は、EUDRの要求事項との整合性やギャップを評価することを検討してください。
これには以下が含まれます:
- 正確な製品情報及び生産国、生産日時、生産地の位置情報を含む、それらの裏付けとなる証拠の収集及び報告。
- 特定されたリスクに対するデューデリジェンス措置及び軽減計画の根拠。
- 製品の原産地とコンプライアンスを検証する所轄官庁向けのデューディリジェンス声明(DDS)を現在どのように作成しているかを含む、デュー・ディリジェンスの実施手順の報告。
FSC認証取得者については、EUDR対応モジュールの中でDDSの義務がさらに明確になります。
ステップ4:サプライチェーンとの協力体制の準備
EUDRの報告要件を満たすために、貴社は取引先に詳細な情報の提供を求めなければいけなくなります。今後数ヶ月の間に取引先に要求する情報の種類を明確にし、取引先にビジネスへの影響と価値を理解してもらい、データや情報のギャップが起きないよう、早い段階からコミュニケーションを開始しましょう。
より詳細なステップ;
- 木材、パルプ、ゴムなど森林由来の原材料を含む取引に関して、現在入手可能なデータのリストを作成する。
- EUDRの公開されている報告要件(例えば、原材料の原産地や収穫時、調達手順、生産工程など。)に基づき、サプライヤーから入手する必要のある情報の潜在的ギャップを特定する。
- 不足している情報を入手するためにサプライヤーを特定し、サポートする。
- サプライヤーとの追加協議が必要となりそうな情報を特定する。
- サプライチェーンに存在する現在のリスクを評価する。現在高リスクであるサプライチェーンや市場は、EUの新たなリスクアセスメントが開始された際にも、高リスクに分類され続ける可能性が高い。リスク評価に応じて、サプライヤーと共にリスク軽減策を準備することを検討する。
- 既存のFSC認証取得者であれば、サプライチェーンにFSC認証の取得とFSCEUDR対応モジュールを検討するよう働きかけてください。
ステップ5:取引先との安全なデータ交換の計画
EUDRの要件を満たすには、供給源から最終地点までの関連サプライチェーンにおける取引の強固なトレーサビリティが必要です。取引先は、すべての原料がEUDR規格に従って調達されたことを確認するために、取引量、製品、原産地、収穫時期、樹種などの取引の詳細について、互いに、そしてその取引先とも、合意しなければならない。また、FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意:Free, Prior and Informed Consent)の遵守など、社会的コンプライアンスの証拠を示す必要もあります。
このような取引データの交換と検証に使用するプロセスや技術的なプラットフォームを取引先と評価します。
FSCは、FSCブロックチェーンと呼ばれるFSC認証取得者専用のプラットフォームを構築しており、利用する認証取得者のトレーサビリティ要件を促進するのに役立ちます。
利用する認証取得者者は、ブロックチェーン技術に基づいて構築されたこのプラットフォームにより、関連データに機密性を保ちつつ、柔軟的かつ効率的にアクセスし、データ交換をすることができるようになります。
FSCブロックチェーンにより、利用者は以下のことが可能になります:
- 取引時点でサプライヤーの認証状況を検証します。
- 自社と取引先との間で取引される製品について、照合された、追跡可能なクレームを作成します。
- 取引先との守秘義務を維持しながら、原産地、収穫時期、樹種、製品グループなどFSC認証製品を構成する原材料に関するデータを、サプライチェーンを通じて受け渡します。
ステップ6: 認証機関にEUDR遵守の意向を伝える
12月の期限が近づくにつれ、認証機関は今年後半から審査が忙しくなることが予想されます。今すぐ認証機関に連絡を取り、EUDRに準拠する意向を伝え、EUDR対応FSCアラインドとFSC EUDR対応モジュールやFSCブロックチェーンなどのツールのs使用計画を確認してください。
このコミュニケーションにより、認証機関はEUDRサポートに対する需要を予測し、その要求されている時間枠の中で審査ができるようサポート体制を検討してくれるでしょう。
全体像がわかるまで待たずに、前もって計画を立て、慌てないようにしましょう!
EUDRの詳細は今後数ヶ月のうちに明らかになりますが、現在ライセンスや認証をお持ちの方は、12月の期限に追われることなく、コンプライアンス遵守への道を歩むことができます。
また、現在FSC認証を取得していない組織も、EUDRへの適合を支援する強力な基盤として、FSC認証の詳細(英語)をご一読いただくことをお勧めいたします。
元記事はこちら。