FSC国際事務局のチーフ・インフォメーションオフィサー且つITディレクターであるMichael Marusからの報告。

2021年にFSCは、ブロックチェーンクラウドベースのITプラットフォームの開発およびパイロットテストを開始しました。パイロットテストは、ブロックチェーン技術がどのように、認証取得者による取引情報の適合確認においてFSCの助けになるか、そしてより重要な視点として、組織が扱う原材料についての情報をいつでも入手できるようにするために、ブロックチェーン技術がどのように使えるかを調べるために実施されました。

パイロットテストについて

パイロットテストはウクライナと中国の2つのサプライチェーンにおいて実施されました。10社の企業がトレーニングを受け、テスト対象のサプライチェーンについてFSC認証原材料の購入と販売情報の共有を行いました。協力企業には3つの取引情報提供方法が与えられました。ウェブ上のインターフェースを用いた方法、大量のデータを流し込むためのスプレッドシートを用いた方法、そしてAPI(企業の既存の原材料取引システムとFSCブロックチェーンITプラットフォームを連携させ、自動入力を可能とするもの)を用いた方法です。

FSCブロックチェーンAPIを使用するために時間と費用を投資した企業はありませんでしたが、ウェブインターフェースとスプレッドシートを用いた方法は試され、1万を超える取引情報がプラットフォームに入力されました。参加企業は、取引データの状態が「提出済み」から「検証中」、そして「検証済み」に変化していく様子を確認できました。

参加企業には、ダミーデータを表示したダッシュボードのテストも呼びかけられました。これは「まだ検証済みになっていない取引データが何件あるのか」や「供給者の中で、検証待ちの取引データがあるのは何社か」というような情報をリアルタイムに確認するためのツールです。

パイロットテストの結果

当初パイロットテストのデータ収集は2021年12月まで行われる予定でした。しかし、参加企業が実際に入力を始めたのが予定よりも遅かったことから、FSCブロックチェーンパイロットテストの期間は2022年第1四半期まで延長されました。

ウクライナの認証取得者が2022年2月に始まったロシアによる侵攻によって影響を受けたことは言うまでもありません。FSCウクライナとパイロットテスト参加企業が、このような中でもテストの継続を確約してくれたことに大きく勇気づけられました。

参加企業からのフィードバックは3つの分野について分析されました。1つ目は、ITプラットフォーム(サインイン、データ入力インターフェース、使い勝手、検証プロセス、報告、ダッシュボード)についてです。FSCブロックチェーンITプラットフォームの反応性と利用可能性について好意的なフィードバックがあったものの、使い勝手については改善が必要であることが指摘されました。このようなフィードバックはIT開発者やデザイナーが、使い勝手がよく、誰でも使用ができるプラットフォームを構築する上で非常に役立ちます。

2つ目は、参加企業が自身の有する原材料収支データとFSCブロックチェーンの互換性についてです。認証取得起票はFSCインプットとアウトプットについて最新の集計記録を保持することが求められています。このような記録とFSCブロックチェーンの互換性は、FSCブロックチェーンパイロットテストに参加するために、どの程度の集計方法の変更が必要になるかという点で重要でした。結果、互換性、フォーマット、データ利用可能性についても好意的なフィードバックが得られました。一方で、データ処理にかかる時間についてはそれほどよいフィードバックが得られませんでした。テストではFSCブロックチェーンプラットフォームにおいて、取引相手の企業が入力した取引情報が現在「検証待ち」であるという情報が通知されなかったため、何日も、何週間もその状態のまま置かれていたことがありました。

3つ目は、FSCブロックチェーンに欠けているものについて、そして欠かせない機能が何かについてです。参加企業からはjどのようなデータがFSCブロックチェーンで共有されるべきかについて活発なフィードバックがありました。サプライチェーンの信頼できる情報を安全につなげることができるのであれば、原産地から最終製品に至るまでの完全なトレーサビリティに必要な情報が伝達される仕組みを入れ込むべきであるという強い意見がありました。

このために必要な情報は明確です:検証された取引情報 vs 原材料の適合検証(原産地まで)、原材料の自動的なマスバランス計算(インプットに基づき、、自動的にアウトプットが計算されるべき)、そして原産地に関わる合法性証明文書です。

FSCブロックチェーンの今後

FSCブロックチェーンのパイロット版は、取引情報の検証を手助けするツールでした。認証取得企業が、運用を大きく変えることなく取引情報を入力できる簡単な方法を提供しました。テストの結果、よりよいデザインの必要性、そして要求事項への適合、トレーサビリティ、取引相手、政府や消費者に対する合法性の証明に関して高まり続けているニーズに対応することができる可能性が示されました。

テストで得た経験とフィードバックを基に、FSCブロックチェーンITプラットフォームの次のバージョンを設計していきます。これには原材料収支やマスバランス計算の強化、検証された取引情報 vs 原材料の適合検証のためのよりよい分析、そしてプライバシーに配慮した企業間の合法性証明文書の伝達などが含まれます。現在の計画としては、2023年に、より多くの企業に参加をしてもらうための機能と能力を実装したFSCブロックチェーンの改良版を開発する予定です。

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