
高級化粧品の基材としても利用されるキャンデリラロウにおいて、世界で初めてFSC FMおよびCoC認証が取得されました。キャンデリラロウは、メキシコの灌木地帯に自生するトウダイグサ科の植物・キャンデリラの茎から得られる天然のロウで、化粧品や食品、電子機器など幅広い用途に用いられています。
この新しい非木材林産物の認証は、多様な生態系や社会状況におけるFSC認証の可能性を広げるものであり、FSC製品の多様化を象徴する事例となりました。
認証を取得した2組織
- シエラ環境管理コンサルティング社(Sierra, Gestión y Consultoría Ambiental S.C.):ラス・コロラダス、バヒオ・デ・アウイチラ、ピエドラス各エヒード(共同管理地)に属する総面積84,605ヘクタールを対象にFMグループ認証を取得。またCoC認証も取得しました。
- Ejidos Unidos para la Producción y Manejo de los Recursos Naturales del Cañón de Hipólito–Alto de Norias S.P.R. de R.L.:ロウ精製工程を対象にCoC認証を取得し、採取から最終製品までのトレーサビリティを確保しています。

メキシコ半乾燥地帯における社会課題への挑戦
キャンデリラは絶滅危惧種ではありませんが、トウダイグサ属(Euphorbia)の一種としてワシントン条約付属書IIに掲載されており、国際取引には許可が必要です。また、メキシコ国内の各種法令にも適合する必要があります。
しかし、これまでのキャンデリラの生産・加工・流通には課題が多く、特に生産地である北東部半乾燥地帯では、キャンデリラロウが重要な収入源でありながら、生産者が価格交渉の力を持たず十分な補償を得られない状況が続いてきました。さらに、認可区域外での採取や、安全衛生上の問題といった社会的課題も指摘されています。
このプロジェクトでは、コミュニティ管理の強化と、粗蝋の販路開拓や現地精製を担う新たな協同組合の設立に取り組みました。その結果、小規模・コミュニティ林向けの枠組みであるFSC継続的改善手順(CIP)を通じてFM認証を取得。CIPは、コミュニティや小規模林家が市場にアクセスしながら、段階的にFSC規格への完全適合を目指せる柔軟なアプローチです。
本プロジェクトは、これまでサステナブル市場から排除されがちだった生態系においても、生物多様性や地域経済・社会に好影響をもたらす非木材林産物の認証が可能であることを実証しました。この事例は、メキシコおよびラテンアメリカでの類似製品認証の先例となるでしょう。
授賞式と地域コミュニティの声
授賞式はアントニオ・ナロ自治農業大学(UAAAN)の講堂で開催され、コアウイラ州のエヒード共同体によるトレーサビリティ、適正生産慣行、低木地生態系保全へのコミットメントが強調されました。
式典には、地方・州・連邦・国際機関の関係者のほか、FSC国際事務局COO、UAAAN研究部長、FSCメキシコ、レフォレスタモス・メキシコ、全国共同林業組織連合(UNOFOC)の代表者らが出席しました。

「キャンデリラロウのFSC認証は、低木地生態系も責任ある管理を通じて社会的・環境的・経済的利益を生み出せることを示しています。FSCメキシコでは、キャンデリラのような非木材林産物を含め、地域的多様性を尊重する基準を推進しています」
— FSCメキシコ全国代表 アルフォンソ・アルグエレス氏
「ここ灌木地帯において、キャンデリラは私たちのアイデンティティの一部です。今日、このFSC認証によって、私たちは自らの声とブランドを持つ組織化された生産者となりました」
— ラス・コロラダス協同組合 保安責任者 ブレイディ・カスティーヨ氏

持続可能なモデルのための協働ネットワーク
このプロジェクトは、コミュニティ、協同組合、技術者、市民団体、環境当局の協働によって実現しました。2024年7月に設立されたラス・コロラダス・キャンデリラロウ協同組合は、エヒードに暮らす男性・女性・若者で構成され、従来は仲介業者に依存していた流通から脱却し、付加価値を付けた製品を最終顧客に直接販売しています。
一方で、精製インフラの不足、限られた運転資金、気候リスクに影響を受けやすい労働環境といった課題も依然として残されています。今後は運営体制をさらに強化し、大規模輸出市場への参入を目指すとともに、他のコミュニティへの拡大を進める方針です。すでにドイツ、フランス、ペルーの買い手から関心が寄せられています。
FSCメキシコは、認証が多様な状況に適応し、生産者コミュニティと責任ある市場を結びつける模範として、この取り組みを引き続き推進していきます。
本プロジェクトの事業者は取引先を求めています。FSC認証キャンデリラロウについての取引にご関心をお持ちの企業は、FSCジャパンにお問い合わせください。
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