本イベントは、カーボンニュートラルやネイチャー・ポジティブの実現に向けて、森林資源の責任ある調達や持続可能な利用が一段と重要視される中、建築や内装分野におけるFSC認証木材の活用促進と流通課題の共有を目的として開催されたものです。
当日は、FM認証取得者、木材流通、建材メーカー、ゼネコン、デベロッパー、内装設計、家具メーカー、設計者など、森林の川上から川下までのサプライチェーンに関わる多様なステークホルダー110名が一堂に会し、先進事例の共有や実務的な課題について活発な議論が行われました。
以下、登壇者の皆様による発表内容の概要をご紹介いたします。
各発表のプレゼン資料も以下よりダウンロードいただけます。
FSCプロジェクト認証のご紹介

初めにFSCジャパン 河野より、FSC認証およびプロジェクト認証の概要、本イベント開催の背景や今後FSCジャパンで予定している取組についてご紹介いたしました。
続いて、FSC認証木材利用に関する先進的な取り組み事例として、4名の登壇者の皆様に2つの事例をご紹介いただきました。
FSC認証木材利用に関する先進的な取り組み 事例1
九州地域における木材バリューチェーン転換と分譲マンションでのFSCプロジェクト認証取得に向けた取り組みについて、九州電力株式会社 音成謙一郎氏、九電不動産株式会社 有吉光希氏のお二人からご紹介いただきました。
木材バリューチェーン転換を通じた森林産業構造改革の試み
九州電力株式会社 ビジネスソリューション統括本部 地域共生本部 産業創生グループ 次長 音成謙一郎 氏

九州電力は、社有林での木材生産や電力会社として培ってきた地域ネットワークの強みを生かし、九州地域における森林から建築までの木材流通を再構築する取り組みを進めています。需要が見えにくい従来の流通構造に対し、森林所有者・製材・プレカット・設計者が連携することによる木材需要の可視化と流通効率化に加え、木造ビルの設計を支援する木工事コーディネーターとの連携を通じて、非住宅分野での木造建築拡大を推進しています。また、FSC認証合板の開発、九電不動産におけるFSCプロジェクト認証取得支援、FSC認証林由来のJクレジットの取り組みや、将来的な事業化と他地域展開を目指す構想についても紹介されました。
分譲マンションにおけるFSCプロジェクト部分認証(LVL材)取得に向けた取り組みについて
九電不動産株式会社 住宅事業部 部長 有吉光希 氏

九電不動産は、分譲マンション開発における環境配慮の取り組みとして、国産材を活用したFSCプロジェクト部分認証の取得に挑戦しています。開発には自然環境が失われるリスクがあるという課題意識を背景に、放置林や国産材需要の低迷といった森林課題への貢献を目指し、九州電力のFSC認証林の木材を原料としたLVL材の開発を推進。加工・流通の各段階で関係事業者が新たにCoC認証を取得し、安定供給体制を構築しました。さらに、独自のFSC対応マニュアル作成や関係者への教育を通じて、分譲マンションでは国内初となるFSCプロジェクト部分認証取得を進めており、建築分野におけるFSC活用の汎用的なモデルとしての可能性が示されました。
FSC認証木材利用に関する先進的な取り組み 事例2
企業に求められる情報開示への対応と認証材の役割、型枠合板における先進的な取り組みについて、三菱地所レジデンス株式会社 石川博明氏、清水建設株式会社 小谷洋史氏のお二人にご紹介いただき、対談を行なっていただきました。
「認証材=信頼の証」 ~ESG・TNFD時代の必須条件になる⁈~
三菱地所レジデンス株式会社 経営企画部 兼務)技術環境部、 株式会社メックecoライフ専任部長 石川博明 氏
三菱地所レジデンスでは、情報開示への対応が求められる中で、木材調達が企業価値やブランドに直結する重要なテーマになっていることを背景に、持続可能な調達のあり方を検討してきました。海外を含むサプライチェーン全体を自社で確認することには限界があるとの認識から、再造林や人権、生物多様性に配慮し、トレーサビリティが担保された木材のみを使用する方針を明確化し、FSC認証材やプロジェクト認証を活用。特にリスクが高いとされる型枠合板から取組を始め、業界全体での改善につなげるため立ち上げた型枠合板の勉強会や、第三者認証を通じて調達リスクを低減し、木材の背景や価値を説明できる体制づくりを進めていることが紹介されました。
企業に求められる情報開示への対応と持続可能な木材調達の取り組み
清水建設株式会社 環境経営推進室 グリーンインフラ推進部 主査 小谷洋史 氏

清水建設では、TNFDへの対応を見据え、建設事業が自然環境へ与える影響をどのように把握・管理していくかについて検討を進めています。発表では、TNFDを自然に関する「企業の健康診断」と捉え、継続的なデータ蓄積によって自社事業の影響やリスクを可視化していく考え方が示されました。具体的な取り組みとして、建設行為に伴う自然改変を事前に点検する「自然KY(危険予知)」や、木材使用量の多いコンクリート型枠に着目し、2030年までに外国産非認証材をゼロを目指す取組を紹介。森林管理の質を担保するFSC認証は、自然資本に配慮した建設を進める上で重要な基盤になるとまとめられました。
事例2の登壇者お二人による対談

対談では、FSCジャパン笹本がファシリテーターを務め、認証材のトレーサビリティ確保に取り組む実務者の視点から、導入の苦労や業界変化について意見交換が行われました。
型枠合板の取り組みでは、関係事業者との交流を通じて、建設業界全体における持続可能な木材調達の必要性への理解が進んでいることを共有いただきました。また、認証の費用面での負担感を軽減することが主流化に向けた重要な課題になるとの指摘がありました。もう一つの課題として、認証材の納材タイミングについて、事前に生産者に必要量を伝えられるよう、既存の発注の仕組みを調整していく必要性についてもお話しいただきました。さらに、今後は、認証林の供給情報の可視化や、設計段階から木材のストーリーを共有できる仕組みづくりが重要であり、認証材を「信頼の証」として業界のスタンダードにしていくことへの期待が語られました。最後に、型枠合板についてはFSC認証の製品が調達できないという具体的な課題に直面していることも共有されました。
FM認証取得者の皆様からの情報提供
事例発表後には、株式会社東京チェンソーズ 戸田光貴氏、株式会社エーゼログループ西粟倉森の学校 川口健太氏、諸塚村役場 甲斐幸一氏より最新のニュースを発表いただきました。
株式会社東京チェンソーズ
戸田光貴 氏

東京チェンソーズは、「一本の木を余すことなく使い切る」ことを軸に、FSC認証林の木材を家具へと展開する取り組みをご紹介いただきました。生産量が少なく、構造材としての大量供給が難しい東京の森の木材を、テーブルなど長く使われる製品として加工し、幹だけでなく枝や端材も含めて価値化することで、森林資源の価値最大化を目指しています。都市空間で使われ続ける製品を通じて、森づくりとものづくり、消費者をつなぐ新たな国産材活用の可能性が示されました。
株式会社エーゼログループ西粟倉森の学校
自然資本事業部 川口健太 氏

岡山県西粟倉村を拠点とするエーゼログループは、木材事業を起点に、FM認証を取得する西粟倉村の100年の森構想と共に進めてきた事業をご紹介いただきました。FSC認証取得から15年の経験を生かし、「スプーン1本から、ビル1棟まで」をテーマに、構造材・合板・内装材など幅広いFSC認証材の供給体制を整備。2028年までに自社製品の全面FSC認証化を目指す方針を発表しました。一方で、エンドユーザーへの価値伝達が課題であり、認証の意義をどう伝えるかが今後の重要なテーマとして共有されました。
諸塚村役場
産業戦略課 主任主事 甲斐幸一 氏

諸塚村は、村域の約9割を森林が占める地域として、早くからFSC森林認証とCoC認証に取り組んできました。小規模な森林所有者が多い中、グループ認証によって持続可能な森林管理を進めています。近年は、村内の認証製材所が一時休止する課題もありましたが、昨年第三セクター化により事業を再開。さらに「諸塚の木を諸塚で使う」仕組みづくりとして、認証材出荷への奨励制度を導入するなど、地域内循環とFSC材利用の定着を目指した取り組みが紹介されました。
ワークショップ

最後に、参加者の皆様に15のグループに分かれていただき、ワークショップを実施しました。このワークショップでは、流通における課題と、FSC認証材の可能性の2つをテーマに、川上に位置するFSC認証林から川下の需要側まで、業種を超えたメンバーで議論いただき、課題解決の糸口を探っていただきました。
参加者からは、多くのステークホルダーの皆様が一堂に会する熱量の高いイベントであったことへの評価や、実践者の生の声を聞くことで認証木材の潜在的な需要を認識することができ、多様な立場の方と課題を共有することができた等のご感想をいただきました。
FSCジャパンでは、FSC 認証木材の流通促進を目指し、今後もこのようなイベントを継続して実施してまいります。
開催概要
日時:2026年1月15日(木)13:00~17:30
会場:場所:3×3Lab Future 東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー・ENEOSビル1階
主催:FSCジャパン
主なプログラム:
- 開会挨拶
- FSCプロジェクト認証のご紹介
- FSC認証木材利用に関する先進的な取り組みのご紹介
- FM認証取得者の皆様からの情報提供
- ワークショップ
- 交流会
