FSC認証材と混ぜて、FSCミックスに使える管理木材。多くの管理木材は、もともと非認証材であった原材料を、<FSC-STD-40-005 FSC管理木材調達のための要求事項>を満たすことを確認して調達したものです。このプロセスで規定されているデューデリジェンスシステムの原産地におけるリスク評価では、<FSC-PRO-60-002a FSC国内リスクアセスメントの枠組み>に基づき策定され、FSCによって認められた管理木材リスクアセスメントが使われてきましたが、この度、この手順文書に代わる<FSC-PRO-60-006b リスクアセスメントの枠組み>が7月1日に公開されました。

この新しいリスクアセスメントの枠組みは、関連する社会・環境的リスクを評価するための64の指標をもち、責任ある調達を保証するEUDRの法的要求事項に沿ったものとなっています。これまでFSCの管理木材調達のためだけに使われていたリスクアセスメントですが、EUDR対応のデューデリジェンスシステム構築にも使えるものとして位置付けられました。

各国リスクアセスメントについて

これまでFSC管理木材の原産地リスク評価で使われていた、<FSC-PRO-60-002a FSC国内リスクアセスメント枠組み>に基づく管理木材リスクアセスメントは、EUDRにおけるリスクアセスメントにも適合する、<FSC-PRO-60-006b リスクアセスメント枠組み>に規定される主要タイププロセスを通して整えられた「FSCリスクアセスメント」に改訂されていく予定です。<ADVICE-40-005-26 FSC 管理木材リスクアセスメントの有効期限の延長>により、過去にFSCにより承認され、現在使われている各国のリスクアセスメントは、新しいものに置き換わるまでFSC管理木材調達には有効となりますが、 FSC EUDR対応モジュールを使用し、EUDRに適合する目的のためにはお使いいただけません。また、既存のリスクアセスメントにおける「低リスク」「特定リスク」は、今後はそれぞれ「無視できるリスク」「無視できないリスク」と呼ばれます。現在有効な各国リスクアセスメントこちら からご覧いただけます。

FSC EUDR対応モジュールリスクアセスメントを使用する必要のある組織は、独自に<FSC-PRO-60-006b リスクアセスメント枠組み>パートIV, V, VI, VIIに従い拡張企業リスクアセスメント(Extended company risk assessment, ECRA)を行う必要があります。詳細は、EUDR対応モジュールをご覧ください。

FSCではこの新たな枠組みに基づき、優先20か国についてFSC本部主導でセントライズド・リスクアセスメント(CNR)を2025年3月1日までに整える予定です。この優先20か国とは、オーストリアブラジルカナダ、チリ、中国、エストニアフィンランドフランスドイツインドネシアラトビアポーランドポルトガルルーマニアスペインスウェーデントルコイギリスウクライナアメリカの20か国です。このCNRAも将来的には、各国において<FSC-PRO-60-006b リスクアセスメント枠組み>の規定する環境・社会・経済のバランスの取れたプロセスで策定されたリスクアセスメントに置き換えられる予定です。その他の国についてはCNRA策定の予定は発表されていません。

日本における管理木材リスクアセスメントについて

日本国内からの管理木材調達にはこれまで、2018年6月に承認されたリスクアセスメント<FSC_NRA-JP V1-0>が有効として使用されてきました。このリスクアセスメントは当初5年間有効ということで、2023年の期限までに改訂が必要とされていましたが、EUDRへの対応としてリスクアセスメントの手順も見直される中で、各国での管理木材リスクアセスメントの改訂作業にはストップがかかり、次の有効なリスクアセスメントに置き換わるまで現行のリスクアセスメントは有効となるという措置が取られました。

今回、新しいリスクアセスメントの枠組みが承認されたことで、各国でリスクアセスメント改訂を進めるためのプロセス手順が定まりましたが、本部は優先国におけるCNRA策定にリソースを割いているため、その他の国でのリスクアセスメント策定・改訂プロセスは必然的に優先順位が下げられることになります。日本国内で新たな手順に基づいたリスクアセスメント策定プロセスを具体的にいつ始められ、リスクアセスメントがいつ頃完成するかはまだ目途が立たない状況ですが、今後、日本におけるリスクアセスメント改訂プロセスや議論に積極的に関わることを希望される方は、担当の三柴(c.mishiba@jp.fsc.org)までご連絡ください。