今回参加したのは、FSCジャパン関係者、FSC FM認証審査員、FM認証取得者、NGOなど、15名。
あらかじめ課題や疑問に感じている点などを持ち寄り、現場での経験を共有しながら、それぞれの立場からの意見を交わしました。速水林業のスタッフや森林組合おわせの方々もお迎えし、熱いディスカッションが展開されました。
2日目には速水林業の見学も行われ、日本で初めてFM認証を取得した速水林業の森や設備などについての説明に参加者は熱心に聞き入っていました。
FSCジャパン副代表でもある速水林業代表・速水亨が、これまでの速水林業の試行錯誤の歴史や森づくりの哲学を面白い失敗談等も交えながら語り、誰もが成功しないと思っていた試みの思いがけない成功談、新しい機械を導入するまでの過程や、徹底的なコストカットの試みなどの話が次々と披露されました。
速水林業が日本で初めてFM認証を取得した当初からの審査員であり、FSCジャパンの理事も務める白石東大名誉教授からは、森林科学の学問的観点からの解説が加えられ、参加者はさわやかな山の空気を満喫しながら森林管理に対する知識を深めました。
持ち寄られた議題の紹介
参加者からは事前に数多くの議題が提案され、また議論の最中に新たな議題もでるなど、終始白熱した話し合いが行われました。
以下にいくつか話し合われたトピックを紹介します:
- 指標1.6.1:「影響を受けるものとの協議によって作成された紛争解決手続きを備えている」という要求事項は日本の苦情処理手順の作り方にそぐわないのではないか。
- 指標1.7.2:日本における汚職関連の法令とは何か。
- 基準2.2:FSCは法令順守を超える水準で男女平等を率先して推進する必要があるか。
- 指標2.3.1:チェーンソーの燃料(ガソリン)を小分けにして運ぶ際のペットボトル使用について。
- 指標2.3.2:昔から使用されている重機にシートベルトを後付けすることの是非、消火器が備えられていない場合の対応、林業機械の法令検査について。
- 指標2.3.2:一人作業を避けられない場合について。特に自伐林家の場合。
- 指標2.3.6:労働災害水準を国内林業の平均水準と比較することの意義。小規模事業者の場合の比較方法について。
- 指標2.3.7:「安全衛生レベルが継続的に向上」の限界と非現実性についてどう対応すべきか。
- 指標2.4.2:「生活賃金を保証」について、認証機関、審査員によって求める活動が一貫していない。世界や日本における最低賃金と生活賃金それぞれの位置づけ。
- 指標2.5.1:教育訓練の手法について、特に社会的な側面の教育訓練について。
- 原則3、4:慣習的な権利の定義と具体例。日本における成文法と不文法の位置づけについて。
- 指標4.2.1:地域社会の森林に対する関心が薄い中で、認証取得者がより積極的に地域社会のニーズを把握するための取組みをすべきか。
- 指標4.3.1:地域社会に対する雇用以外のより積極的なサービス提供をすべきか。
- 原則3、4:FPICをどのように実践しているか。
- 基準6.4:積極的に植生調査などをするほどに希少種が特定されて守ることが求められる現状について。
- 指標6.5.4:保全地帯網は公有林ほど大きな面積を求めるべきではないか。
- 指標6.7.1:河岸のバッファーゾーンにおける皆伐は可能か。
- 基準6.8:「気候変動に強い森林」がFSC国際事務局の目指すものとして議論されている。これを日本国内規格にも反映すべきではないか。
- 原則7:管理計画を策定するにあたり、ビジョン、管理目的、管理活動の階層構造をより意識した作り方が求められているが、現実にはできていない場合が多い。
- 指標7.6.1:より積極的に利害関係者を巻き込む努力が必要か。「協議」という訳を修正したほうがよいのではないか。
- 基準8.2:固定プロットをいくつか設けて成長量調査を行うことは統計上あまり意味はない。定点写真によるモニタリングの実効性があまり見られていない。
- 基準9.1:HCV5とHCV6の特定について、具体例を知りたい。
- 指標9.1.2:Global Forest Watchが公開している日本の原生林景観の地図は、誰が特定して提供した情報であるか知っている人はいるか。
- 指標10.1.1:皆伐後の天然更新の是非。
- 指標10.3.3:特定外来生物をより積極的に発見し、防除する活動を求めるべきか。
- 基準10.6:国際標準指標では「肥料」と書かれているが国内規格では多くの項目が「化学肥料」となっている。これでよいのか。
- 指標10.7.1:「総合的な病虫獣害対策」というものが正確にイメージされていない。一方シカによる獣害、松枯れ、ナラ枯れなど地域全体での総合的な計画が必要なものに対して認証取得者それぞれにどこまでを求めるのか。
- 基準10.9:自然災害リスクが過去にないほどに高まっている。土砂流出については、路網系の林業が一般的になりすぎていることが原因であることは明らか。
- 基準10.10:作業路開設や改修の際に法面から流出する土壌をどの程度厳しく審査するか。
- その他:規模、強度、リスクに応じた規格作りを目指すべきか。
懇親会でも議論は尽きず、参加者からは「審査員の考え方を知ることができてよかった」「基準に関する理解が深まった」「様々な立場の人が自由に議論でき、まさにFSC」といった感想が寄せられました。
FSCジャパンでは今後も、認証取得者と認証機関の規格に対する理解を深めるための取組み、認証取得者や認証機関の審査員同士が意見交換できる場の提供を継続的に行っていきたいと考えています。