FSCの信頼性保証に関する取り組みを行う上でのパートナーであるASI(Assurance Services International)が実施した、FSC認証バーチ合板サプライチェーンに対する取引情報照合調査の最終結果が公開されました。これによれば、偽造文書、不正行為、調査の意図的な妨害に関連するFSCの信頼性を損なう可能性のある問題が判明しました。
この取引情報照合調査およびASIが収集した証拠に基づき、FSCは現時点で以下の4社の認証を停止しました。

 

  1. Xuzhou Aoxin Wood Products Co., Ltd. (FSC-C168958)

    不正なFSC表示付きバーチ合板を販売していたことが、取引先との確認で明らかになりました。しかし、同組織は認証機関に対し、FSC表示付きで認証材を販売してはおらず、FSC認証木材の保管も一切していないと申告していました。

  2. Furuida Wood Co., Ltd. (FSC-C017910)

    Xuzhou Aoxin Wood Products Co., Ltd. (FSC-C168958)と密接な取引関係にあり、両組織の認証範囲はほぼ同じでした。

  3. Petek Kontrplak San ve Tic A.Ş. (FSC-C146820)

    2021年から2023年までの期間、認証機関に対しFSC製品の売上高ゼロを報告していましたが、Petekと取引のある認証取得者3社は、PetekからFSC 100%合板を購入したと報告しました。

  4. Tianma Lvjian Nantong Wood Structure Technology Co. Ltd. (FSC-C159853)

    十分な在庫がないにもかかわらず、FSC表示付きでFSC認証材を認証取得者2社に販売していました。さらに、これらの取引を認証機関およびASIに報告していませんでした。

 

ASIはまた、FSC認証バーチ合板サプライチェーンの信頼性に関するリスクをもたらす他の認証取得者を特定しました。FSCはASIが収集した証拠を精査しており、この結果に基づき一部の認証取得者の認証を停止する可能性があります。

取引情報照合調査について

この取引情報照合調査は、FSCが策定したユーラシア地域における信頼性確保のための作業計画(英語)の一環で実施されました。この計画はユーラシア地域のFSC認証バーチ材のサプライチェーンに存在する様々な信頼性に関するリスクを特定し、対処することを目的としています。

ASIは、2023年、ラトビア、トルコ、カザフスタン、中国などの仲介国を経由して、非認証のバーチ材(ロシア産木材を含む)がFSC認証サプライチェーンに混入するリスクを特定するため、この取引情報照合を開始しました。

この取引情報照合調査及び関連する調査の一環として、ASIは中国、ラトビア、オーストラリア、エストニア、トルコの認証取得者に対し、抜き打ちを含む12件のコンプライアンス評価も実施しています。

主な調査結果

  • トレーサビリティの課題:本取引情報照合調査の結果、FSC認証バーチ合板サプライチェーンの認証取得者は、バルト海地域(特にラトビアとエストニア)の認証木材に大きく依存していることが確認されました。しかし、調査完了前にサプライチェーン下流の認証が失効したこと、一部の認証取得者からの協力が得られなかったこと、必要な文書が不足していたことにより、バーチ材の原産地を追跡・確認することが困難であることが判明しました。
  • ウクライナ産バーチ材:ウクライナにおける紛争状況と、紛争地域からの木材がFSC認証サプライチェーンに流入しないことを保証するためのFSCの方針の適用は、認証機関と認証取得者双方に調達上の課題をもたらしています。FSCとASIは現在、ウクライナからのFSC認証木材供給に関する特別調査を開始しています。
  • 紛争前のロシア産材在庫:ASIは、一部の認証取得者は、ロシア・ウクライナ紛争以前に遡るロシア産バーチ材の在庫を保有していることを確認しました。現在、全てのロシア産木材は認証サプライチェーンへの流入が禁止されています。

進行中の取り組み

FSCは、ユーラシア地域における信頼性確保のための作業計画を通じて、取引情報照合調査や、重点調査、基準文書の改善、樹種同定検査などを実施することで、FSC認証バーチ材のサプライチェーンを継続的に監視しています。

最近公開されたアドバイスノート「『FSC認証製品の販売実績なし』の情報公開」(ADV-STD-20-011_15_V1-0)により、認証機関に「FSC認証製品の販売実績がない」と報告した認証取得者の情報をFSCが公開できるようになります。2026年1月1日からは、FSCデータベース(FSC検索)では閲覧者が「FSC認証製品販売実績なし」を申告した認証取得者の名称を確認できるオプションが追加されます。

本取引情報照合調査を含む様々な信頼性を担保するための調査の結果、監査時に「FSC認証製品の販売実績なし」と虚偽の報告をする認証取得者が存在することが確認されました。認証取得者の販売状況を公開することで、システム全体の透明性が向上し、FSCだけでなく、より広範なステークホルダーが、この情報を用いてデューデリジェンスやコンプライアンスのプロセスの強化、取引先とのコミュニケーションに活用できるようになります。

今回の調査結果は、FSC認証制度におけるサプライチェーンの検証メカニズムとトレーサビリティが非常に重要であることを浮き彫りにしました。FSCは引き続きサプライチェーンの信頼性強化に取り組んでいきますが、認証取得者に対しても、高い水準のデューデリジェンスを徹底するよう奨励しています。

 

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