FSCとASI(Assurance Services International)は、「ベトナムにおける森林管理の取引情報の照合調査」を完了しました。この取引情報の照合調査では、厳格な監査が追加して実施され、その結果、認証機関によって非適切な組織の認証が自主的に取り下げられたり、強制的に取り消されたりする事例が見られました。
FSCとASIは、2023年にベトナムにおける森林管理の取引情報の照合調査を開始しました。目的は、FSC認証林から伐採され、木質ペレット製造業者に販売される木材の取引パターンと量を追跡することでした。ASIは、ベトナム国内の24万1,600ヘクタールを超える森林を対象に、56の森林管理認証取得社と368のCoC認証取得者から、2022年1月から12月までの取引データを収集しました。
調査の第一段階で、取引量に大きな不一致が見られたサプライチェーンや、その他の信頼性リスクが特定されました。これを踏まえ、ASIは内部告発者からの情報や、過去の地域的なペレット市場の調査で得た知見も考慮に入れ、10のサプライチェーン・クラスターについてさらなる調査を実施しました。
この調査中に、取引データの提出要求に応じなかった6つの認証取得者が認証機関によって認証を取り消されました。また、精査を避けるためか、自主的に認証を取り下げた組織も少数見られました。
主な調査結果と今後の対応
1. 認証停止(ブロック)の措置:
ASIは、3つの認証取得者について、FSCシステムからの「認証停止とブロック」をFSCに勧告しました。FSCは現在、ASIから提出された証拠を精査し、ブロックの手続きを開始しようとしています。また、意図的に調査を妨害した認証取得者1社についても、同様に認証停止が検討されています。
2. セルフビリングによる信頼性リスク:
今回の調査に参加した多くの森林管理認証取得者は、グループ認証でした。ASIは、これらのグループ企業の一部が、グループメンバーに買い手との直接取引を許可し、買い手が請求書および関連書類を作成していることを確認しました。しかし、FSC認証取得者であるグループの管理者自身がその販売状況を把握できていないケースが見られました。これは、FSCの定めるグループ認証の基準(FSC-STD-30-005 V2-1)で許可されているものの、今回の調査で、FSCの要求事項に完全に適合しているかを確認する上で、特定のリスクがあることが明らかになりました。
3. 伐採方法に関する注意点:
FSCの基準では、伐採は「持続可能なレベル」で行われる必要があります。今回の調査では、ベトナムの一部のアカシアプランテーションが、通常よりも短いサイクルで伐採を行っていることが判明しました。これらの運用でも認証を取得できる可能性はありますが、FSCは、伐採期間が短いことによる潜在的な環境への影響を認識しているため、認証機関と認証組織の両方が、この要件を一貫して解釈し、適用することの重要性を強調しています。必要に応じて、この問題についてさらに調査を進める可能性があります。
木質ペレット業界は、急速な成長を遂げています。世界的に化石燃料による排出量削減が求められる中、各国政府は、エネルギー業界に木質ペレットをはじめとするバイオマス燃料へ転換するよう促す政策を進めています。
特にアジア太平洋地域では、韓国と日本がこの方針を推進するための補助金制度を設けてきました。韓国は2025年1月に補助金制度を廃止しましたが、日本は現在もバイオマス燃料の利用を引き続き奨励しています。ベトナムの木質ペレット製造業者は日本と大規模な取引を行っているため、FSC認証の木質ペレットの需要は非常に高くなっています。
だからこそ、FSCとASIにとって、「森からペレットまで」サプライチェーン全体におけるFSC認証木質ペレットの取引の量とパターンを監視することが、非常に重要となっています。
今回の「ベトナムにおける森林管理の取引情報の照合調査」で得られた知見は、サプライチェーン全体の透明性をさらに高め、優良な慣行を強化するための良い機会となります。FSCは今後も、ステークホルダー、認証機関、そして認証取得者と連携を取り続け、FSCの要求事項が一貫して実施されるように支援し、システムの継続的な改善を促進していきます。
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