山本麻希先生写真

 第15回目となる今回は、獣害対策のプロとして全国を飛び回っていらっしゃる長岡技術科学大学物質生物系准教授の山本麻希先生を講師にお迎えしました。山本先生からは、全国の林業者を悩ます野生動物、特にシカの管理について、長年の現場経験や研究から得られた豊富な知見やデータを基にお話しいただきました。

 現在、日本全国でシカやイノシシによる農作物の被害額は年間100億円にのぼると言われています。中でもシカは森林被害面積の7割以上を占めており、増えすぎたシカがもたらす生態系への影響は、植物相の変化、下層植生の消失、土壌流出、さらには土砂災害の誘発といった甚大なものです。このような状況を受け、日本全国で懸命に管理捕獲や有害捕獲が進められていますが、シカは20%、イノシシは64%という驚異的な繁殖力をもち、個体数が多ければ指数関数的に増加するため、低密度で管理する必要性が強調されました。

 さらに、捕獲においてはハード(道具)とソフト(捕獲者の技術)の両方が重要であることも語られました。ハード面では罠の種類による捕獲効率の違いが研究データにより示され、ソフト面では、罠の危険性を一度学習した動物は再び捕獲されにくいため、一度で確実に仕留めることがいかに重要であるかが説明されました。つまりは「高い技術を持った捕獲者がいい罠で失敗せずに捕る」ということです。

 シカによる被害を防ぐための具体的な対策(柵の設置等)も紹介された後、最後には、獣害を包括的な社会問題として捉え、野生動物との共存を目指すための里山の循環型資源利用や、多様な生物を育む森づくりといったより大きな視点での問題解決に向けてのビジョンが語られました。

本勉強会には82名の方にご参加いただき、大変盛況のうちに終了いたしました。