日本では、林業は多くの若者が目指す職業ではありません。肉体的に過酷で、注目されることも少なく、消えつつある産業と見なされがちです。そんな中、あえてこの道を選んだ若き担い手たちがいます。東京チェンソーズの吉田尚樹さんと伏見直之さんは、檜原の山々で、彼らが生まれるずっと前に植えられた森林を再生させるために日々活動しています。

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予想外の場所で見つけた使命

Japan combo copy_1_0.jpg 二人とも、最初から林業を目指していたわけではありませんでした。元々「何か人の役に立つことをしたい」という思いを持っていた伏見さんは、日本の森林が荒れ、管理が行き届かなくなっている現状を目の当たりにしたことで、それが生態系や水資源に与える影響を痛感しました。そこで、理論ではなく実際に手を動かしてできる行動として林業に行き着いたのです。

吉田さんも同じような思いを抱いていました。「外で働きたかったんです。同時に、都市と自然のバランスを守るという、重要な役割も果たせないかと思っていました。林業ならそのようなことができるのではないかと考えました。」と吉田さんは語ります。

二人は、この道が華やかではないことをよく理解していました。業界は長年、高齢化が進んでおり、注目されることも少なく、経済的にも報われにくい状況が続いています。しかし、東京チェンソーズで働き始めたとき、そこには何か違うものを感じました。意志があり、現代的で、未来を見据えたエネルギーがあったのです。

目に見える変化を生み出す仕事

自分たちの手で行った作業が目に見える変化となって現れることが、彼らのモチベーションに繋がっていると言います。下刈りで生い茂った草を刈り取った後、再び森の木々の間から地面に光が差し込む様子を見た時、成長しきった山々に新たな道を開き、暗く生い茂った森を間伐した後、光が満ち、風通しの良くなった森を歩く時、やりがいを感じると伏見さんは語ります。

振り返ったとき、森がより明るく、生き生きとしているように見える瞬間があります。その瞬間、まるで森が生き返ったような力強さを感じます。

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現在、管理職に就いている吉田さんは、また違った視点からその変化を見ています。彼は、森林の生態的、文化的、そして経済的な価値を都市部とのつながりの中でどう活かしていくかに注力しています。「これは単なる木材ではありません。歴史と未来の可能性を秘めた貴重な資産なんです。」と彼は語ります。

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伏見さんもまた、より大きな視点で森林の未来を見つめています。「森林には人が必要です。50年前、東京だけで何千人もの林業従事者がいました。今では数百人しかいません。森林は今もそこにありますが、それを守る手が足りていません。」

日本の森林の未来は、これからより多くの人がその価値を理解し、一員となって参加してくれるかどうかにかかっていると、二人は考えています。

もっと多くの若い人たちの参加が必要です。新しいアイデアやエネルギーを持った人たちが林業には求められています。林業は変わることができますし、私たちは既にその変化を感じ始めています。

伝統が根強く息づくこの業界において、彼らの存在そのものが変革の証しとなっています。困難を恐れず、彼らは林業を自分たちの未来として選びました。そしてその選択が、日本の森林の未来を形作る原動力となっているのです。

 

※本記事はFSC国際事務局の「The Unsung Heroes of the Forests」キャンペーンの記事を日本語訳したものです。原文やその他の記事については以下よりご覧ください。