アフリカン・ブラックウッドは世界で最も価値の高い木材のひとつです。木管楽器に求められる材質という点において代替となる木材が非常に限られるためです。かつてはサハラ以南アフリカの乾燥した地域においてよく見られた木でしたが、過伐や違法取引により激減し、現在では南タンザニアと北モザンビークの僻地の森林のみに残るだけとなってしまいました。

ありがたいことに、アフリカン・ブラックウッドの責任ある取引を行なうためのキャンペーンにより、FSC CoC認証でタンザニアで森林に依存して暮らしている人々、木管楽器メーカー、そして世界中の音楽家が繋がることが出来ました。

2009年3月、タンザニアのNGOであるムピンゴ保全開発イニシアチブ(MCDI)がコミュニティと共同で管理する自然林にFSC森林管理認証が与えられました。それから9ヶ月後にはKikole村において最初のFSC認証アフリカン・ブラックウッドが伐採されました。この成功を受け、2010年には認証面積が8倍に拡大し、17,000haを超えました。

2011年にイギリス最大手のクラリネットメーカーであるHanson Clarinet社から世界初のFSC認証木管楽器が作られ、コミュニティによる持続的な森林管理から始まるサプライチェーンが最後までCoC認証により繋がりました。

FSC認証の導入以前は地域の村人がアフリカン・ブラックウッドや他の木材を販売することはありませんでした。あっても伐採権保有者を手伝った際に時折入る微々たる収入だけでした。村長のMwinyimkuu Awadhi氏は次のように語っています。「Kikole村の村人は初めて自身の木材を販売することにより得られる便益に気が付きました。以前は木材の収益はすべて政府に入っていましたが、自身で販売することによりすべての収益が自分たちに入るようになりました。私たちは現在自分たちの森林資源を自身で管理するようになり、将来的にはより多くの収益をあげられると考えています」。