EU内で森林に由来する日用品を販売する企業や、これらの商品をEUに輸出する企業は2024年12月までにEUDR(EU森林減少フリー製品に関する規則)に適合しなければなりません。小規模な企業や零細企業には法的な要求事項を満たすために更に6か月の期間が与えられます。

EUDRは、合法性だけでなく持続可能性までをカバーするという意味で画期的な法律です。これは、政策決定者がようやく森林がもたらす生態系サービスや、気候変動緩和機能や生物多様性保全機能といった本当の価値へ意識を向けたことを示しています。EUDRの下ではEU内で日用品を販売する企業は、その製品が最近森林破された土地から調達されていないこと、そして森林破壊に寄与しないことを証明しなければなりません。この手続きは煩雑であり、FSCは関係者がうまく乗り越えることができるように力を与えていきます。

どのようにFSCが役立つのか

まず明確にしなければいけないのは、FSC認証製品だからと言って自動的にEUDRの義務を免除されるわけではありません。FSCは、明確なガイダンスと必要とされている技術を提供することで、効果的なデータの収集と処理を通じて、企業がEUDRに適合するための手続きを簡素化することで役立ちます。

EUDRには企業が満たさなければならない、以下の6つの中核的な要求事項があります:

  1. 法的な要件を満たす。
  2. 社会的な保護措置を満たす。
  3. 自身の製品が森林破壊および森林劣化フリーであることを証明する。
  4. 原材料の原産地を証明するための地理位置情報(ジオロケーション)データを提供する。
  5. サプライチェーンのライフサイクルに渡る製品のトレーサビリティを示す。
  6. 適切なリスク回避・低減戦略を策定するために、リスクアセスメントのルールを遵守する。

世界で最も信頼される森林認証制度としてFSCは、既に利害関係者にEUDR要求事項の多くの項目を満たす、強固な認証を提供しています。FSC認証は、既にEUDRの法的な要件と社会的な保護措置に完全に適合しています。これには例えば公平な賃金、森林で働く人の権利を尊重した安全な労働環境の提供が含まれます。

これからFSCは新たなソリューションとして一連のEUDR Alignedというツールを2024年6月までに公開し、利害関係者が期間内にEUDRに適合できるようにしていきます。この新たなツールは、デューディリジェンス手続きをガイドする者であり、明確な3つのステップを通じてEUDRへの適合を証明するためのものです。

FSC規制モジュールFSC Regulatory Module)は、EUDR Alignedの重要な構成要素であり、FSCがすでに持つ強固な規格に更なるレイヤーを加えます。このモジュールは、製品が森林破壊および森林劣化フリーであることを証明するためのEUDRの特定要求事項に整合したものとなります。リスク管理の枠組みRisk Management Framework)は、FSCの既存の包括的なリスクアセスメントを更に補完するものです。これはEUDRのリスクアセスメントおよびリスク回避・低減に関する特定要求事項と整合した新たな措置を導入したものとなります。これらのツールは共に完成間近です。

同時にFSCは、多くの企業、特に小規模森林所有者が利用できていない革新的かつ使い勝手の良い技術のフィールドテストのための開発にも取り組んでいます。EUDR Alignedには、これらの技術を用いたツールが含まれ、利害関係者が利用可能となる予定であり、現在技術の強化に取り組んでいます:

  • 既存のFSC GIS Portal内の技術の一部として、衛星画像とGISマッピングは、EUDRの要求する地理位置情報(ジオロケーション境界データを提供できるように拡張されています。
  • FSC Blockchain もEUDRの求めるサプライチェーンのトレーサビリティを提供できるように拡張されています。

FSCは信頼できるパートナーです

FSCは2013年から始まったEUDR策定までの旅路において、EUの政策策定者、研究者、森林所有者、先住民族のリーダーや先進的な企業と協同してきたことを誇りに思っています。

2013年&2014年:EUTRのサポート

2013年3月:違法伐採と森林破壊を食い止めるためのEUTR(UE木材規則)が発効しました。FSCは、木材IDやブロックチェーンのような革新的な技術を用いることで、合法性だけでなく持続可能性にも踏み込んだEUTRの要求事項を企業が満たすためのサポートを提供してきました。この先進的なアプローチをとったことは、EUTRが廃止され、強固で包括的なEUDRへの道が開かれた中で、FSCが進化の草の根レベルに位置することができたという意味で重要でした。

2014年:FSCは、世界の森林保護と復元のための欧州委員会専門家グループ/マルチステークホルダープラットフォームの一員となりました。これは持続可能な森林管理という分野における信頼できる権威としてのFSCの立場を証明しています。

2020年~2023年:EUDRに向けたロビー活動

2020年:FSCは、WWFによる森林破壊を止めるためのより強いEU法を求めるグローバルキャンペーンに参加しました。この呼びかけは欧州委員会の注目を集めるきっかけとなりました。

2021年11月:欧州委員会が森林破壊フリー製品に関する規制の提案を承認しました。これにはFSCによる規制強化のための10の提言も含まれています。

2022年11月:FSCは、持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォームの市民社会メンバーと共にEUDRの規制対象に天然ゴムを含めるよう提言するレターに署名しました。天然ゴムが対象に含まれたことは、EUDRへの加盟は、FSCのような組織が影響力のある政策に強い影響力を持つことを示しています。

2022年12月:EUが森林破壊フリー製品に関する規則に合意しました。FSCは、規則を指示する声明を公開しました。

2023年6月:EUDRが発効したことをFSCとして発表しました

次のステップ

森林に対するビジョンが、FSCとEUDRを共通のミッションの下で結束させています。FSCは過去10年間、EUDRの確固たる支持者であり、強力な利害関係者グループと共にこの規制を実現する上で重要な役割を果たしてきました。そのため、FSCはこの規制の内容を十分に把握しており、EUDR Alignedを通じて利害関係者が円滑に適合できるようサポートする上で、最適な立場にあります。

EUDRについては、こちらに専用のページを設けています。また、EUDRへの適合方法についてご質問のある方はEUDR@fsc.org にご連絡いただくことも可能です。

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