東京郊外の檜原村は、何世代にもわたって風景を形作ってきた、そびえ立つ杉やヒノキが生い茂る、日本の象徴的な山林地帯の一つです。この森の中で、日本の林業の未来を再考する青木亮輔さんは、単なる林業家ではなく、多くの人々の手によって植えられた森林が、持続可能に管理され、次世代に引き継がれるように、日本の過去と未来をつなぐ架け橋として活動しています。
青木さんの林業への道は、最初から明確に定まっていたわけではありませんでした。大阪で生まれ育った青木さんは、海沿いの地域で生活を送りながら、常に自然に魅かれていました。大学では山を登り、洞窟を探検し、川を旅しました。そして、日本の森林が労働者の高齢化により、管理が行き届かなくなっていることを知り、そこに一つの機会を見出しました。2006年に、彼は東京チェンソーズを設立し、林業だけでなく、人々と土地が改めて繋がりを持つことにも力を入れる活動を始めました。
森に命を吹き込む
檜原の森林は生産林として、FSC認証を取得しています。青木さんと彼のチームは、伐採量が森林の自然な成長量を超えないよう、厳しいガイドラインに従って管理しています。しかし、青木さんのビジョンは木材の生産にとどまりません。彼は、もっと多くの人々に森を見にきてもらい、森の中を歩き、価値を理解してほしいと考えています。そこで彼らは、道幅の狭い、自然をほとんど傷つけない作業道を作りました。この道を活用して人々に森を間近で体験してもらい、長らく失われていた森とのつながりを改めて取り戻すことを目指しています。
青木さんにとって、これらの活動はただの森林保全ではありません。新たなつながりを通じて、森に命を吹き込むことなのです。彼の最も革新的なプロジェクトの一つに、伝統的な和太鼓を作る宮本卯之助商店との連携があります。これまで和太鼓の原材料は希少な古木が主流とされていましたが、今では檜原のFSC認証木材を使った太鼓が作られています。
私たちは、持続可能性と伝統が共存できるという新しい考え方を証明しています。
森林管理の現実に立ち向かう
青木さんの仕事には課題もあります。檜原では鹿の個体数が急増し、若木が食べられてしまうという被害が広がっています。また、FSC認証には毎年収穫できる木材の量に厳しい制限があり、健全な森林を維持するために、間伐作業を慎重な管理の元で実施しなければなりません。
これらの現実に向き合いながらも、青木さんはFSC認証を、責任を持って森林を管理し、バランスを保つためのガイドラインとして、重要なツールだと捉えています。「これは、私たちが持続可能性に真剣に取り組んでいる証であり、世界的な持続可能性のムーブメントと共鳴していることを示す証でもあります。」と青木さんは語ります。
日本の林業の未来について考える青木さんは、「若者たちは林業を避けがちです。それは、林業が厳しく危険で、しかも注目されることが少ない職業だからです。しかし、東京チェンソーズはその考え方を変えようとしています。ソーシャルメディアや地域社会との交流を通じて、林業を若者にとって魅力的で新しい挑戦と捉えてもらえるよう取り組んでいます。」と語ります。青木さんは、情熱的で若いチームに支えられ、林業の未来が安泰であることを確信しています。
青木さんにとって、森林は日本の文化とアイデンティティの一部だと言います。
森は私たちと切り離された存在ではありません。森は私たちの川、都市、空気を形作り、私たち自身の一部なのです。
青木さんのように、木々の声に耳を傾ける人がいる限り、彼らの物語は今後も成長し続けるでしょう。
青木亮輔さんの仕事についてさらに知りたい方は、こちらの記事「進化する和太鼓、自然と響き合う鼓動」もご覧ください。
※本記事はFSC国際事務局の「The Unsung Heroes of the Forests」キャンペーンの記事を日本語訳したものです。原文やその他の記事については以下よりご覧ください。