FSCのITディレクターであり、再考情報責任者であるMichael Marusは次のように述べています。

虚偽表示は、サプライチェーンに大きな影響を与え、ビジネスだけではなく、その従業員やひいては森林にまで影響が及びます。FSCのブロックチェーン検証技術は、虚偽FSC表示や不適合林産物の発生を防ぐこと、そして「その原材料について知ろう」という考え方をサポートすることを目的としています。

FSCの評判と信頼性を守り、保証の力を強化し、虚偽表示を伴う取引を防ぐためにFSCを進化させる上で、情報技術は重要な役割を担います。私たちは、リスクを発見して対応するための能力を強化するべく総合的なデジタルソリューションを開発しており、最近ではFSC GISポータルデジタル審査レポートを導入しました。

この度、FSCでは最新の技術革新として、リスクの高いサプライチェーンにおけるFSCブロックチェーンベータデジタル検証プログラムの試験を行うことを決定しました。これは、ブロックチェーン技術を用いたFSC原材料のトレーサビリティと取引におけるコンプライアンスに革命をもたらすことを目的としています

ここで、これまでのサプライチェーン完全性・信頼性調査における経験を共有することで、なぜ私がサプライチェーンの悩みである虚偽表示の問題の解決に、ブロックチェーン技術が活用できると信じているのかを説明したいと思います。

FSCの商標は私たちの幅広い利害関係者にとって価値のあるものであり、私たちは商標を守り、商標権を強化するために商標使用の適合性をモニタリングし、虚偽表示の調査をしています。認証取得者は、FSC商標を製品用ラベルそして広告宣伝目的で使用することが許可されています。そして認証製品の販売時には購入者に対して認証製品の販売であることを伝えるためのFSC表示を伝票に記載します。

FSCサプライチェーンにおいて虚偽表示や非認証製品を発見するということは、信頼性の崩壊を意味し、誠実に要求事項を守っている認証取得者の努力までもが無駄になりかねません。FSCサプライチェーン調査や取引情報の照合は、認証取得者によって行われる不正な活動についてFSCが調査、発見、対応するための仕組みです。これまでの調査や取引情報の照合から得られた2つの重要かつ繰り返される現実を共有します。

1つ目は、調査によってFSCは過去に起こった問題に対処することができますが、多くの場合は、問題が発覚した時には当該原材料は既にサプライチェーンの下流、時には消費者にまで届いていたということです。サプライチェーン上の1つの組織によって行われた不正な活動は、FSCだけでなく、サプライチェーン下流で誠実に要求事項を守っている認証取得者の信頼と評判にも悪影響を与えます。取引情報の照合は、調査を下支えするためには有効ですが、事後のデータを用いた調査では、FSC認証規格を誠実に守っているすべての認証取得者を守るためには不十分です。

2つ目は、FSCサプライチェーン調査における取引情報の照合は、特定の時期の特定の高リスクサプライチェーンだけに焦点を当てているということです。取引情報の照合を実施するためには、複数のステップが必要であり、サプライチェーン上の企業秘密を守るために、各企業とその認証機関がそれぞれに連絡を取り、データを収集するという手続きが必要です。

原材料の適合性確認と疑う余地のないトレーサビリティは、認証取得者とFSCにとって重要です。現在の非効率かつ時機を逸した情報の確認という問題を解決しつつ、同時に企業秘密を守るために情報技術は役立つと信じています。

簡単に言えば、ブロックチェーンとは記録管理のためのデジタル技術です。取引情報を改ざんのできないデジタル帳簿に記録します(不変性と呼ばれるコンセプト)。これらの取引情報は帳簿上でデータブロックの鎖として記録されるのですが、各取引情報が帳簿に記録される前に、その正確さと信頼性を定めた合意された手続きを経る必要があります。仮想通貨で用いられるパブリックブロックチェーンとは違い、コンソーシアムまたは許可プライベートブロックチェーンによる帳簿は、ブロックチェーンへの参加が許可された組織だけがアクセスできるという制限が掛けられます。これらの組織はお互いを知らない組織であっても問題ありません。

世界中の多くのサプライチェーン同様に、林産物のサプライチェーンもインボイス、B/Lやその他の署名や捺印を伴う紙の文書に依頼しています。紙による仕組みは、例えば数量を増やすというような文書の改ざんまたは偽造による虚偽表示のリスクを負っています。ブロックチェーンは、安全な技術を用いてサプライチェーン上のFSC原材料の適合性とトレーサビリティの検証方法を根本から変えます。原材料が適格であることを紙の伝票を通じて伝えるという紙ベースの方法から脱却します。

ブロックチェーンのもう一つの重要な側面は、不変性や情報セキュリティ、そしてお互いを知っているか知らないかに関わらずに、参加組織による合意された手続きを提供する上での構造的および運用面でのITの制限を乗り越えるために役立つことです。認証取得者は自身の直接の供給者は知っていますが、その供給者の供給者までは知らないことが多いです。ブロックチェーンは、取引相手が供給地に至るまでに原材料を取り扱うすべての組織とつながることを可能とし、その原材料がサプライチェーン上を動く際に適合性を検証することができます。しかもこれは、直接の取引相手を超えたビジネス関係を明確にする必要なく行うことが可能です。

私は、取引される原材料が適合しており、供給地までトレース可能であることを検証するため、ブロックチェーンが認証取得者にとっても役立つものだと信じています。FSC認証取得者は、認証材取引の最新の原材料収支記録を保持することが求められています。これらの記録をブロックチェーンに活用することで、サプライチェーン全域に安全にこれらの取引記録を共有し、検証できるようにすることが可能です。

FSCブロックチェーンベータは、FSCサプライチェーンにおける原材料の取引適合性を検証するための、許可プライベートブロックチェーン帳簿のプラットフォームです。私たちは、2021年4月から10月にかけてこの技術のパイロットテストを、高リスクサプライチェーンにおいて実施します。この間にテストへの協力を求められる認証取得者には別途連絡がされます。

試験プログラムの目標は、取引適合性の検証方法を変革させるためにブロックチェーン技術の便利さを証明することです。テストにおいて、認証取得者が標準化された取引情報を共有するための要求事項を満たすための方法を正確に把握し、また認証取得者にとって必要不可欠な機能を洗い出します。今回のテストを通じて、現実の取引データを用いてブロックチェーン技術を検証することで、将来的により幅広い認証取得者へ展開するための条件を見極めていきます。

FSCブロックチェーンは、安全かつ信頼性の高い方法でFSC認証材のインプットとアウトプットのリアルタイムな取引情報を検証するためのデジタルプラットフォームとして、原材料の取引適合性検証方法とトレーサビリティに変革をもたらすと信じています。

FSCブロックチェーンベータについて、より詳しく知らりたい場合や、意見を述べたいという場合はこちらの元記事の最下部のリンクをご覧ください。