美幌町森林組合

“普及”がメインの取り組みと企業が評価する国際基準の意外な効果

美幌町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉サミットの森、絆の森、年賀の森、自動車リサイクルの森...。さまざまな名前が付けられた企業の森が広がる北海道網走郡美幌町。平成17年(2005)、美幌町森林組合が代表者となってFSC/FM認証を取得した同町だが、その二年ほど前、美幌町の森でひとつのモニタリング調査が行われた。当時、国内では日本独自の森林認証制度を作る準備が進んでおり、国内の数箇所の森林でモニタリングが行われていた。北海道の森のサンプルとして調査された美幌町の山は評価も高く、調査に参加していた認証機関から、この森であればFSC認証もすぐに取得できるレベルであるという評価を受けた。

美幌町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉「あのときのモニタリング調査がなければ、現在のFSC認証に関わる取り組みはなかったでしょうね」。美幌町経済部耕地林務主幹の伊成博次さんは、当時の様子を振り返りながらFSC認証取得への経緯をそう話す。 モニタリング調査が行われた翌年、美幌町、森林組合、消費者団体など24の団体と公募によって選ばれた町民が参加する「未来を拓く森林づくり協議会」が設立された。その後一年以上の時間をかけて協議と検討を重ね、平成17年にFSC/FM認証を取得。「森林認証に取り組むにあたり、どの認証制度にするのか議論されましたが、より厳しい基準を持つ国際基準の森林認証を取得できるのであればということで、FSC認証に取り組むことになりました」。

FSCを地域経済に組み込む

美幌町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉FSC認証の取得に向かって動き出した美幌町だったが、一方では認証を取得してどう活用するのかという意見もあった。そこで考えたのが、認証材を活用して住宅をつくり、地域経済の活性化にまで発展させようという構想だった。
「FSC認証を活かすためには、COC認証も必要です。そこで、町内の住宅加工業者、集成材、プレカットなど一連の流れの業者を個別に回って説明し理解を頂いたので、地元の工務店数社からなる『美幌.木夢クラブ(ビホロドットコムクラブ)』を設立。平成19年にFSC/COC認証を取得しました」。
同時に美幌森林組合や木材加工業者、流通業者など19の事業者がCOC認証を取得。これにより、町内の業者による美幌町のFSC認証材で造る家作りの体制が整い、19年9月から町産材活用促進事業補助制度が施行された。

町民に美幌町の認証材を使ってもらうことでFSCを普及していこうというこの助成制度だが、実はその背景には、町内工務店の新築住宅施行実績が、町外の工務店に圧されていたという現実があった。「大手の参入もあり、町内の新築住宅施行数に対する町内工務店のシェアは30~40%ほどでした。少なくてもこれを50%以上に、できれば70~80%までに引き上げたいという思いがありました」と話す伊成さん。助成制度が施行されて以降、平成26年度末までに助成を受けた家は既に117棟建っており、町内工務店のシェアも年平均63%を達成。単純計算で年間5億円の経済効果が生まれたと分析している。

“使えない”から“使える”カラマツへ

こうして軌道に乗りつつある美幌町の認証材住宅だが、実は当初、町内の工務店はカラマツ材で家を建てることに難色を示していたという。というのも、カラマツ材を使った家作りは北海道内では十勝方面では行われていたものの、美幌町を含む網走管内ではほとんど実例がなかった。美幌町内ではフィンランドのホワイトウッドなど安価な輸入材が使われることが多く、地元に木があるのに使われない現状を重く見た美幌町ではまずは見本をと、カラマツの集成材を使ってモデルハウスを一棟建設。研修会などを開き、それをきっかけにカラマツの集成材が見直されるようになった。

現在、美幌町の町産材活用促進事業補助制度では、美幌町の認証材1m3毎に4万円の助成が受けられる。「安い輸入材で展開する大手に対し、地元産のカラマツ材で参入していくのは簡単ではありません。そこで、輸入材とカラマツの集成材の価格の差を助成しましょうというのがこの制度の基本的な考えです」。 税金を使うことになる助成制度だが、経済的には町内で循環しており、最終的には税金として町に戻る仕組みだという。たしかに理屈ではそうだが、それを実践できる自治体となるとそうはないであろう。町では今後、仮に輸入材との価格差が大きくなったとしても、それに合わせて差額分を助成しましょうというスタンスで続けていく考えだという。

予想外のPR効果と企業の評価

住宅に対する助成制度を、町内におけるFSCの普及が目的と位置付ける美幌町。一方、全国会議などの会場では、「FSC認証を取得している町」として美幌町の評価があがっているという。「例えばお金をかけて観光のPRをしてもあまり効果は見られませんが、町産のFSC材活用住宅などの事業を展開していると、思いのほかPR効果があることがわかりました」。

美幌町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉また、FSC認証に対して大きな付加価値を見出してくれるのが環境意識の高い大企業や団体だという。美幌町では平成20年(2008)に北海道で開催された洞爺湖サミットをきっかけに、参加型の森づくりプログラム「びほろ企業の森林(もり)づくり」事業を展開。環境意識の高い企業・団体から寄付を受け、森林の創生を行っている。この事業に参加するのは、企業の社会・環境貢献活動として取り組むケースがほとんどで、賛同する企業には伐採を終えて地ごしらえされた森を企業の森として提供し、命名権と、その森で最長20年間利用をする権利が与えられる。継続的に寄付を行う企業も多く、各企業の森では寄付を行った企業の社員が毎年訪れて、植林や下刈りを体験する活動も活発に行われている。

美幌町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉企業がこうした事業へ参加する例は、FSC認証の有無に関わらず全国の山林で見られるが、美幌町の事業に参加する企業・団体は、FSC認証というものをよく理解したうえで賛同している。企業として賛同するには、いい加減なものであってはならず、フィールドの選定の際に威力を発揮するのが、国際基準のルールでしっかりとした管理を行っているFSCのブランドイメージだという。材価への付加価値ばかりが期待されるFSC認証だが、実はこうした“社会的信頼”という効果があることは大変興味深い。

FSCをめぐる新たな動き

FSC認証を取得してから丸10年、FSCを中心に事業を展開してきた美幌町だが、今年度からはデザイナーと協働で認証材製品の商品開発をスタートしている。また、昨年度からはFSC認証の山の所有者に対して助成制度を設け、立木1M3あたり1000円の付加価値を認証材に付け、一般材との差別化を図っている。

美幌町森林組合 – 美幌町森林組合 (© 美幌町)© 美幌町さらに今年度からは、満一歳を迎えた町内の子供を対象に「はじめての木づかい事業」を開始。一歳の誕生日になった子供に美幌町の認証材で作られた木のおもちゃがプレゼントされ、積み木、車、おわん、釣り堀ゲームの中から好きなものが誕生日に贈られる。昨年度からは、婚姻届の一部をFSC材で作った木のフレームに入れて記念品としてプレゼントするサービスも行われており、町内の多くのシーンでFSC材が活用され始めている。

美幌町森林組合 (© 美幌町)© 美幌町こうした中、2015年10月には、これまで展示スペースとして利用されていた林業館の内装すべてをFSC材で改修。雪の多い季節でも子供たちが元気に遊べる施設「きてらす」がオープンした。施設内には木の三輪車やスマートボール、木のプールなどが用意され、なかでもアスレチック機能を備えた美幌町オリジナルの遊具「コンビネーション遊具」は子供たちに絶大な人気を誇っている。

林業の現場だけで完結してしまいがちな国内のFSC認証だが、川上から川下まで、すべての町民がFSCを肌で感じられるような創意工夫を凝らす一方、「企業の森」のように外部への発信も欠かさない美幌町の取り組み。この町が次にどのような一手を打ってくるのか楽しみでならない。


文:藤島斉

基本情報

認証の詳細については名称をクリックいただくとご覧になれます。

【名称】
美幌町森林組合

【所在地】
〒092-0027 北海道網走郡美幌町字稲美234−3

【主な樹種】
カラマツ、トドマツ

【取扱製品】
原木、ラミナ集成材、建築材、梱包材、パレット、おもちゃ

【問い合せ】

  • 電話番号:0152-73-1281
  • メールアドレス:bihorosinrin@diary.ocn.ne.jp
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