有限会社藤原造林

藤原造林 (© 藤島斉)© 藤島斉時代によって変化する多様なニーズに対応できる山づくりを進める山梨県の(有)藤原造林。「薄い利益をいかに長期間にわたって得ていくか、それが林業という仕事だと思っています」と話す代表取締役の藤原正志氏は、森林を受託管理する自らの役割を「荒廃している山を真剣に育て、後世に引き渡す役」と位置づけ、現代版〝山守〟として活動する。近年続く木材価格の低迷に加え、松くい虫やシカの食害被害に長期にわたって晒されている山梨県だが、そんな状況下で現代の山守はどのような山づくりを行っているのか。藤原造林の山を訪ねてみた。

〝右向け左〟の山づくり

「日本人は一人が右を向けばみんな右を向いてしまうところがありますが、山づくりに関して言えば一人くらいは左を向く人が必要。うちがその〝右向け左〟の会社です」。山に向かう車中、藤原代表が口を開いた。

山梨県甲斐市を拠点に山づくりを行う藤原造林。かつては甲府の北部の県有林に500haの植栽を行うなど、長年に渡り県有林の請負業務を行ってきた同社に転機が訪れたのは平成15年のこと。事業体でも条件を満たすことで森林施業計画が立てられるように法律が改定されたことを受け、それまで管理していた森を集約化。施業計画を立てて持続可能な山づくりに取り組む方向に経営方針を転換した。

もっとも、初めて集約した山ということもあり、何から手をつけていいか分からなかったという藤原代表は、「人の山を預かるからには…」と、あらためて山を勉強する必要性を強く感じる。そこで、スタッフと共に全国の山を視察して回ることから始め、幾つかの林業地を訪問する中で三重県の諸戸林業と出会う。
「当時、自分たちが管理していた山と諸戸林業の山に、多くの共通性がありました」と話す藤原代表。「同行していたスタッフとも相談した結果、諸戸林業で行われている手法を自分たちの管理する山にも取り入れようということになりました」。

たどり着いた先は吉野の山づくり

藤原造林 (© 藤島斉)© 藤島斉目指すべく山の姿が決まり、さっそく諸戸林業の山づくりを調べると、奈良県吉野の林業にルーツがあることが判明。そこで藤原代表は、大阪府の指導林家で作業道作業道づくりの名人として知られる大橋慶三郎氏の著書で紹介されていた吉野の清光林業を訪ね弟子入りを志願。これまで自分たちが触れてきた山づくりとは異なる施業のノウハウを学ぶ。

現在、藤原造林が管理する山では、この時に学んだ大橋式作業道に基づいた道が整備されている。山が崩れないよう路盤を丸太で補強し、排水ゴムで雨水をコントロールするのが大橋式作業道の特徴だが、実際に現場を見ると驚くほどコンパクトな作業道に、まるで散策路を歩いているような印象を受ける。

一般に、日本の林業の現場では作業道は盛り土を含めて4mほどの道幅が標準だが、目の前に続く作業道の幅は約半分の2・5m。「目指しているのは将来に渡って管理していける健全な森。そういう森を次の世代に繋げていく山づくりを実践していますが、そのためには山への負担を極力抑えることが重要です」と、藤原代表。作業道を作るには山を削らなくてはならないが、山を切るということは土砂崩れの原因にもつながる。急峻で雨の多い日本の山では、4m幅の作業道よりも2・5m幅の方が防災面や搬出コストなどの面からみてもメリットが多く、山との調和も取れていると藤原代表は説明する。

たしかに山への負担ということであれば、道幅は狭い方が負担は少ない。そういう意味では、急峻な山の多い本州の林業地ではもっと大橋式の作業道が広まっても良さそうなものだが、話はそう単純ではない。現代の林業はハーベスターやグラップルソーなどの大型の高性能林業機械が多く、それを利用した作業が主流である。こうした機械を山に入れて作業をするには、どうしても4m幅の道が必要になってくるのだ。

小型林業機械の開発とメリット

藤原造林 (© 有限会社藤原造林)© 有限会社藤原造林藤原造林でも山を集約した当初、山梨県の林業普及員の方々に間伐搬出の方法を相談したところ、スイングヤーダ、ハーベスタ、フォーワーダという現代林業の〝三種の神器〟を使って出すのが主流だと教わったそうだ。
「スイングヤーダを自社で購入し、ハーベスタ、フォワーダを借りて作業をしましたが、機械が大きくて周囲の木を擦ってしまいました」と、藤原代表は当時の様子を語ってくれたが、大型の機械を使った作業は不安定で、いつ機械がひっくり返ってもおかしくない状態で作業をしていたこともあったという。

その後も既存の機械をいろいろと試してみたが、2・5m幅の作業道に合うものには出会えずにいた藤原代表は、狭い作業道でも安定して作業できる小型の機械を自社で開発する。以後、周囲の立木に傷をつけることもなくなり、安全に作業ができるようになる。
山に負担をかけず、低コストで効率良く木を出すことをコンセプトに開発された小型の高性能林業機械だが、燃費も良く、移動も容易で、車両の値段も従来のものと比べて安いなどメリットも多い。県外の業者からの引き合いもあり、現在では遠く隠岐の島でも活躍しているという。

コンサルタントが提案したFSC

現在、藤原造林が管理する山は、山梨県下を中心に約400ha、130を超える森林所有者の山を預かっている。現場は大きく4つのエリアにまとまっており、その全てがFSCのFM認証を取得している。
FSC認証については、全国の森を視察する中でその存在を知り、機会があれば取得したいと考えていたそうだ。視察で訪れた認証林に比べると、山梨県の山は落葉樹も多く植生もずっと豊かなので、しっかりと手入れをすれば必ず認証取得できると思ったそうだ。だが、実際に取得となるとハードルが高いという印象が強く、すぐには踏み切れなかったという。

その後、しばらくの間は山づくりの目標として位置付けていたFSC認証だったが、山梨県がFSC認証を取得したと聞き、自分たちでも取得できるのではないかと考え始める。そんな折、林業経営のコンサルティングを依頼していた会社から、マーケティングという視点からFSC認証を取得してみてはどうかという提案を受け、藤原代表はその提案に背中を押されるように認証取得へと舵を切る。当時すでにFSC認証を取得していた県外の森林組合を訪ねて資料を開示してもらうなど積極的に情報収集に努め、平成24年3月、127haの森林を対象にFSC-FM認証を取得する。

認証取得を目標としていたこともあり、審査の際も施業面では大きな問題はなかったそうだが、必要書類の中にFSCならではの特殊なタイプの書類があり、その書類の準備に手間取ったという。もっとも、書類を用意する一連の作業から新たな考えが生まれることもあり、審査を通じて社内のスキルを上げることができたという。

藤原造林 (© 有限会社藤原造林)© 有限会社藤原造林マーケティング戦略の一環として認証を取得したこともあり、藤原造林の生産する木材は川下までサプライチェーンが繋がっている。その量年間4000m3、同社が生産する木材の実に約8割がFSC材として三菱地所ホームの建築材になっている点は非常に興味深い。

山の変化で計画を変更

藤原造林の管理する山はアカマツが5割、カラマツが3割を占め、残りの2割を広葉樹とスギ・ヒノキが分けるという内訳になっている。実は、藤原造林では当初、アカマツを収穫間伐しながら注文材に応じられるような長伐期林の山づくりを計画していた。作業道沿いには梁として使える12m〜13mの長モノ用のアカマツが点在していたが、ここ数年の間に松くい虫の被害を受けて次々に枯れてしまい、計画の変更を余儀なくされたという。実際、案内された現場では、松くい虫の被害で枝葉が赤く変色したアカマツの姿が目立つ。

今のところ松くい虫に関しては沈静化の兆しはなく、どうやって上手に付き合っていくかを模索しているという藤原代表。現在は広葉樹を残しながら建築材として出荷できるアカマツを択伐し、建築材として利用できないアカマツに関してはバイオマスの資源として活用しているそうだ。県内には松くい虫の被害を受けて放置されている山林も多いそうだが、藤原造林ではバイオマス用チップへの活用が功を奏し、アカマツの歩留まりは80%にも及ぶという。「枯れた山だからどうにもならないと思っている森林所有者が多いのですが、そうした山でも積極的に活用していくことを説明しつつ、長期的な山のビジョンを説明して山を管理しています」。

択伐された山はその後一年ほど萌芽させ、二年目から植栽をするという山作りをあらためて始めたところだという藤原代表。案内された植栽現場を見ると、広葉樹が点在するなか、スギに混じるようにカラマツが密植されている。もちろんそうするには理由があり、複数の樹種を混植することで木の生育が促され、高密度に密植することで適度に下草が残る理想の形に仕上がるのだという。

目の前の植栽地では、説明された通りの形で育林が進められているが、これだけ複数の樹種が混在していると収穫の時に面倒ではないのか疑問が湧く。「心配ありません。これだけ高密度に作業道が入っているので、針葉樹や広葉樹が混在していても必要な木に容易にアプローチでき、面倒ということはありません。むしろカラマツだけを植えて松くい虫などのリスクを負うよりも、カラマツ、スギ、広葉樹でリスクを分散できる方がいいですね」と、藤原代表は現在行っている多種多様な山作りのメリットを説明する。

未来のニーズを見据えて

藤原造林 (© 藤島斉)© 藤島斉「松くい虫の被害からもわかるように、病気のリスク、価格のリスク、作業システムも時代によって変化するのが林業です。そうした変化にも柔軟に対応できるように樹種の多様化を目指し、常に先が読めるような形で次世代に繋げていくような山作りを今後も続けていきたいと考えています」。
藤原代表は今後の展望をこのように話してくれたが、衣食住の「住」がもっとも重要視されなくなった昨今、建築の現場では合成集成材が当たり前になっており、もはやヒノキ一辺倒では現場のニーズに対応できなくなっている。現場のニーズにこたえる一方、50年先、100年先の現場では何が求められているのか未来を見据えつつ、どうすれば健全な森林環境を次の世代に残せるのか常に考えながら山を管理し作っていく。決して簡単なことではないが、そこが林業のやりがいでもあるのだろう。

「今、こういう山を作っておけば将来的に間違いない、という芯になる考えをスタッフ一同で共有しています。その考えを森林所有者の皆さんに提案しながら山づくりを進められる。その点が森林組合にはない当社の特徴といえるでしょう」。
山を預かり、利益を還元しながら次の世代に良い形で山を引き継いでいく。現代版山守として山づくりに取り組む藤原代表の理念の中に、FSCの理念のかけらが見えた気がした。


文:藤島斉

基本情報

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【名称】
有限会社藤原造林

【所在地】
〒466−0126 山梨県甲斐市大下条466-4

【主な樹種】
アカマツ、カラマツ、スギ、ヒノキ、クリ、その他広葉樹

【問い合せ】

関連CoC認証取得者

【名称】
株式会社林友林
ベニヤ産業株式会社
三菱地所株式会社
三菱地所ホーム株式会社
株式会社三菱地所住宅加工センター

【取扱製品】
建築用材

【問い合せ】
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