四万十町森林組合

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉高知県幡多郡大正町(現四万十町)。日本最後の清流と称される四万十川のほとりに、106haの森からスタートしたFSC認証林「結の森」がある。古くは幡多ヒノキの産地として全国にその名を知られたこの地域が、どのようなきっかけでFSCと出会い、広まっていったのか。認証取得者で森を管理する四万十町森林組合を訪ね、FSCとの出会いから、森の活用や木材利用の取り組みなどについて話を伺った。

創業100周年。企業が踏み出した新たな記念プロジェクト

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉「川を挟んだ正面、対岸に見えているのがFSC認証を受けている『結の森(ゆいのもり)』です」。国道381号線沿いに建つ道の駅「四万十大正」からの景色を眺めながら、四万十町森林組合窪川支所長の小野川拓治さんが案内をしてくれた。「平成18年にこの106haの結の森から始まったFSC認証林は、現在5400haにまで広がりました」。

文具やオフィス家具の国内トップメーカとして知られるコクヨ株式会社。実はこの結の森は、コクヨグループの創業100周年を記念して誕生した森である。当時同社では、森林の資源を利用して成長してきた企業として、荒廃する日本の人工林の行く末を懸念。森林整備に加えて経済面でも森林に貢献ができないかと、その活動の場を探していた。

候補地が絞られていく中、旧大正町の森を結の森のフィールドとすることに決まる。実はコクヨグループと大正町森林組合(現四万十町森林組合)とは、1997年から間伐材を利用した商品の事業提携を行っていた。提携を通じて森林組合とコクヨとの間には強い信頼関係が育まれており、また、林業の現状に危機感を持っていた森林組合にとって、コクヨという大きな企業ならではのノウハウを林業の活性化に活かせるのではないかとの思いもあり、森林組合とコクヨが協働で取り組むことが正式に決まった。

二つの森林認証

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉「道の駅から真正面に見える森を結の森として利用したい」。そんな要望をコクヨ側から受けた森林組合だったが、更にもうひとつ、コクヨ側から出された要望がFSC認証の取得だった。
「FSC認証については、どのような制度であるか知っていました。取得すれば森林組合としてもPRになりますし、他の林産地との差別化にも繋がります。さっそく認証取得の準備に移りました」と、小野川所長は当時の様子を振り返る。

ところがこの時、大正町の方からFSCではなく国内の森林認証制度であるSGECの認証を取得してもらえないかという打診があった。というのも、当時から遡ること一年前、大正町では町が管理者となって町有林を対象として国内の森林認証制度であるSGECを取得していた。「町からはSGECを取得してもらえないかという話がありましたが、コクヨさんからは、国際認証を取得したいという強い希望もあり、当初の要望どおりFSCの取得準備を進めることになりました」。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉当時すでに「環境ナンバーワン企業」を合言葉に、環境対応型の商品を創出してきたコクヨグループが、国際認証というグローバルな展開をみせるFSC認証を選択するのは自然な流れだった。その後、大正町は合併して現在の四万十町となり、現在ではFSCとSGECの二つの認証林が共存。四万十森林組合はその両方の森を管理する珍しい森林組合となっている。

森林と地域の再生

106haの結の森から始まったFSC認証林は、その後も旧大正町を中心に年々増加を続け、現在では四万十町の町有林と一部の社有林を除いた大正地区内の森林のほぼ全域5400haを網羅するまでに広がった。
ここで注目したいのは、結の森が森林を保全することだけを目的にしているのではなく、地域の活性化や交流の場として活用されるようにも力を入れている点だ。一般に、企業が森林管理の費用をサポートする森、いわゆる「企業の森」では、企業はスポンサー役にとどまるケースが少なくない。そうしたなか、結の森では、コクヨグループのスタッフをはじめ、周辺地域に住む多くの人が関われる仕組みが作られて実践されている。

例えば、結の森では年に一度、植生調査が実施されている。調査には森林組合の職員だけでなく、地元の四万十高校の生徒「結の森・妖精チーム」が参加するほか、コクヨの社員も参加して、木の直径や高さ、枝葉が地表を覆っている割合を示す植被率などを調査している。
調査の目的は大きく分けて二つ。森林の状態を判断することと、間伐による森林の変化を見ること。調査結果はコクヨのホームページ上で公開されており、間伐による下層植生の増加、シカによる植物への影響などの検証を加えた上で調査年毎にまとめられ、非常に興味深い資料となっている。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉また、四万十川の水質や生態系を把握するための清流基準調査も毎年行なわれており、結の森での間伐活動が川にどのような変化を与えるのか、四万十高校の生徒や地域住民が観測を続けている。筑波大学大学院研究チームの研究フィールドとしても利用されており、四万十高校の生徒がデータ収集のお手伝いをするという交流も生まれている。この交流が縁となり、四万十高校から筑波大学に入学した生徒も誕生するなど、まさに人と人とをつなぐ〝つながり〟の森となっている。

結の森をこれまでの林業とは違う形で積極的に利用するコクヨだが、同社では入社して3年間で一人前の社員に育てる「一人前認定」というユニークな制度を実施しており、3年間で9つの要件をクリアした社員を「一人前」として認定している。結の森での活動は一人前になるための重要な要件のひとつで、社員一人ひとりの環境に対する意識を向上させるのに役立っているそうだ。

「一人前研修には東京と大阪から毎年15~16人の社員が研修に来てくれます」と話す小野川所長。引率する森林組合の職員の中には若い職員もいるので、林業とは異なる外の世界に目を向けるよい機会になっているそうだ。結の森が森林の再生の場としてはもちろん、人と人、山と町とのつながりを再生する場としても活用されている点はとても興味深い。

〝市場価値ゼロ〟を新たな資源に

このように、一般的な林業にはない動きを見せる結の森だが、林業本来の目的である木材の生産林としても機能している。コクヨでは結の森から産出される間伐材を利用し、2009年12月にFSC認証製品の会議用テーブル「FUBI(フウビ)」を発売。天板から脚部までのすべてにヒノキを使ったこのシリーズは商品バリエーションも豊富で、無機質になりがちなオフィスに木のぬくもりを取り入れることを提案。2010年度のグッドデザイン賞を受賞するなど多方面で高い評価を受けている。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉一方、森林組合でも旧大正町時代の2011年の春に、オリジナル家具ブランド「ヒノキカグ大正集成」を創設。森を育てて伐採し、市場に出すというこれまでの一般的な森林組合のスタイルに加え、森林資源を活用して販売し、その利益を再び森へと返して循環させる仕組みづくりに取り組んでいる。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉こうした動きを可能にしたのが、1992年に森林組合が開設した集成材工場の存在だ。林業の将来に対し、高い危機感を持っていた当時の大正町森林組合では、住宅用の材として多くの木材を市場に出す一方、端材や曲がり材のように市場価値がないとして山に放置してきた材に注目。間伐材や端尺材、曲がり材などの小片から集成材を作る事業に乗り出した。
当時、県内には多くの製材工場があったが、国産材を利用した集成材工場は四国にはなかった。地元の雇用創出という目的も兼ねた集成材工場の誕生は時代のニーズに応え、その後のコクヨとの出会いにも繋がっていく。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉間伐材や端尺材、曲がり材などの小片から集成材をつくりだす作業には、多くの手間がかかる。実際に工場を見学する機会を得たが、質の劣る材が混ざっていないか人の目で一つひとつ選別する丁寧さには正直なところ驚いた。こうした丁寧な作業によって、割れ、変形、反りなどのユーザーが敬遠する木の特製が最小限に抑えられ、これまで「利用価値ゼロ」として見向きもされていなかったものに新たな命が吹き込まれ、利用価値の高い木材に生まれ変わっていく。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉現在、集成材工場は30人規模のスタッフで稼動しており、FSCとSGECの二つ森林認証制度のCOC認証を取得している。認証製品に対応する一方、一般ユーザーの注文にも対応しており、「一般のお客さんからこういうものを作って欲しいと注文があれば、棚一つ、板一枚からでも対応します」と、小野川所長は説明する。予算に応じたデザイン案と見積りを無料で作成し、ユーザーが納得の行く形になるまで打ち合わせを重ねたうえで製作に入るスタイルは好評で、月日を重ねても飽きることなく愛用できるオーダーメイド家具として、全国にファンを広げている。

また、四万十町の小学校に集成材を使った机とイスを提供するほか、2014年3月に竣工した四万十町役場本庁舎にも多くの集成材を提供。木造化・木質化が積極的に進められた新本庁舎は四万十町の新たなランドマーク的存在になっている。この新本庁舎のプロジェクトには結の森で協働するコクヨ(株)も支援しており、窓口カウンターや待合ロビーなどの共有スペースを中心に企画・設計・施工に参加。同社が長年蓄積してきたノウハウの織り込まれた新本庁舎は、第28回日経ニューオフィス賞の四国経済産業局長賞を受賞するなど、見事な庁舎に仕上がっている。

さらに森林組合では、集成材として使用できなかった材に対しても積極的な活用を進めている。選別からもれた材や加工の過程で発生したおがくずについては、木材を乾燥させるための木質バイオマスボイラーの燃料として利用。近年では町内のトマト農家をはじめ、高知県庁でも木質系バイオマスボイラーの利用が進められており、こうしたボイラーへの重要な燃料供給源を担っている。

四万十町森林組合 (© 藤島斉)© 藤島斉このように、企業と協働で森の新たな利用価値を追求する一方、未利用材の活用などとことんまで木を使い尽くすことを重視した森づくりを実践する四万十町森林組合。日本の林業が低迷する中、全国各地で森林再生が急務であると叫ばれるようになって久しいが、結の森と集成材工場を中心とした四万十町森林組合の取り組みには、木を育てるということだけにとどまらない、真の意味での林業再生のヒントがあるように思えてならない。


文:藤島斉

基本情報

【名称】
四万十町森林組合

【所在地】
〒786-0301 高知県高岡郡四万十町古市町10番14号

【主な樹種】
ヒノキ

【取扱製品】
原木

【問い合せ】

関連CoC認証取得者

【名称】
四万十町森林組合大正集成工場

【所在地】
高知県高岡郡四万十町瀬里57-3

【取扱製品】
チップ、建材、ベニヤ、家具、玩具など

【問い合せ】

  • 電話番号:0880-27-0175
  • FAX:0880-27-1032
  • メール:info@hinokikagu.com
  • ウェブサイト
© Forest Stewardship Council® · FSC® F000218